04 哀れな関西人
「結花ちゃん、俺のタオル知らへん?」
「忍足先輩のタオルならAコートのベンチにかかってましたよ」
「…あそこか。おおきに」
あっという間に放課後だ。
物品庫からボールカゴを取り出し、両手に持って運んでいると部室から出てきた忍足先輩にトンッと肩を叩かれた。
そしてタオルのありかを伝えると、思い出したように頷きながらも複雑な表情で私に背中を向ける。
「…あかん」
ポツリと忍足先輩の声がした気がする。
「あかんわぁ!!」
突然の大きな声にビクッと肩が弾む。
ボール落とすところだった。危ない危ない。
「どうしたんだよ侑士」
「あかんで岳人…」
「はぁ?」
「結花ちゃんと何話していいか、わからへん」
「なんだよそれ!」
ハハハッと笑う向日先輩の隣で「笑い事やない」と忍足先輩が嘆いている。
「樺地ですら結花ちゃんと仲良ぉ喋っとるんやで!?」
えっえっ、私はそんなに冷めているように見られているのか、絡みにくいタイプなのか…
「瑞河は何の話でも聞いてくれますけどね」
「日吉、自分まで言うんか」
日吉君のときは、ほとんど一方的に私が話している気がするけど…
「忍足、何油売ってんだ!…おい結花!30分後に正レギュラーをウエイト室に集合させろ!」
「はーい」
「…これだけでも立派な会話だろ」
「違うんやて〜」
「もう侑士うるさい」
「!?」
あー…忍足先輩しょげちゃった。向日先輩にうるさいって言われたらショックですよね。
「みなさーん。ウエイト室集合らしいですよー」
忍足先輩聞こえてるかな?
「結花。忍足はほっといていいから行くぞ」
「えー…」
亮君に引っ張られ、長太郎君と日吉君には背中を押され、私はその場から離れた。