07 注意人物
「遅かったけど何かしてたの?」
「別に。何でもねぇよ」
「ふーん」
隣で向かい風に吹かれながら「明日英語のテストだー」と呑気に言っている結花を見る限り、今の自分の状態に気づいてないようだ。
まあそれはそれで、俺達は見張りやすいだろう。
「亮君、英語教えて」
「ばーか。英語は頭が痛くなる程嫌いだ」
***
あの話をしてから一週間が過ぎた。
この一週間で森下が部員を数名引き連れて、放課後毎日のようにテニスコートの隅に顔を見せるようになったが、見たところ結花に話しかけている様子はなしだ。
「鳳、日吉。後は頼む」
「はい」
「任せてください」
朝練を終え、2人に指示し返事を確認すると、結花を連れて玄関に向かっていった。
***
「あれ?」
「結花、どうした」
「あ、んん、何でもない」
何だろうコレ。
靴箱から上靴を取り出そうと手を伸ばすと、靴の中に四つ折りになった紙が入っていた。とりあえず…、とポケットに紙をしまって若と長太郎君の後を追った。
教室に入るとHRが始まり、いつものように授業を受ける。そしてリップクリームを取り出そうとポケットに手を突っ込むと、カサッと指先に先程の紙が触れる。
…そういえば、何だろう。
四つ折りのまま取り出してノートの上でそれを広げる。
「!!」
白い紙に差し出し人もなく、ただ真ん中に一行だけ。
───“好きです。”
To be continued ..