08 守りたい存在
──次の日。
また上靴に違和感がある。それを取り出すと、昨日と同じ四つ折りの手紙が入っていた。
「まただ…」
どこを見ても差出人の名前がないのは昨日と同じだ。
「あっ、ちょっと」
後ろから手が伸びてきたと思ったら、若がそれを奪い取って私を見ていた。長太郎君も若の後ろから覗き込む形で立っていた。
「何だ、これは」
「誰かが間違えて入れてて…って開かないでよ!」
「…ふーん。これでも人違いって言うのか?」
「え?」
開いた手紙をパラッと私の方に向けてきてハッとした。
“瑞河結花さん。
昨日の手紙は読んでくれましたか?”
サーッと血の気が引く感じがした。
「昨日って?」
「鳳。ここじゃ話しにくい。屋上に行くぞ」
***
2人に腕を引かれ、誰もいない屋上に連れてこられた。
「それで?」
「昨日、同じように手紙が入ってて…」
差出人の名前もなく、自分のものじゃないと思ったから、そのまま放置していた。そう告げると「はぁ…」と若が目の前で溜息を吐いた。
「何かあったら言えって、昨日言っただろ」
「…ごめんなさい」
「まあまあ、日吉。結花手紙は持ってる?」
「あ、うん」
ポケットから昨日の手紙を取り出し長太郎君に渡す。
手紙を開くと2人もハッとした顔をした。やっぱり驚くよね。
「…可能性はなくもない」
「そうだね」
「何が?」
突然小声で話しだす2人に疑問を持つが「なんでもない」とだけ言葉を返された。
「これ、ちょっと借りても良いかな?」
「構わないけど…」
わからない。だけどその手紙をどうするのかは聞けなかった。