フリージア

□09
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09 幼なじみ



「ムカつくんだよ」


ガシャンと何かが倒れる音と共に、低めの男の声が私達の後ろから聞こえる。そして振り返るより先に亮君が、若と長太郎君の方に私の体を押し出した。


「そうゆうのがムカつくって言ってんだよ、宍戸」


あぁ、この声は…


「何の用だ森下。お前んちこっちじゃねーだろーが」
「関係ねーだろ」


ドスの利いた声色にビクリと肩が跳ねる。

……何これ。

肩にエナメルを下げた森下先輩がこちらを睨みつけていた。


「何なんだよ、お前。いつもいつも…俺の邪魔ばっかりしやがって」
「はっ?意味わかんねーよ」


亮君の表情は見えないが、森下先輩が眉をしかめ、ギリッと歯を食いしばるのが見えた。


「俺はただ…」


…あ……

悲しみの混じった視線と一瞬ぶつかった気がする。だけどその視線が消え、亮君に向けた視線が、若や長太郎君にも向けられる。


「お前らも、邪魔なんだよ」


ジリジリと詰め寄ってくる森下先輩に、亮君が突っかかるように先輩の前で足を止めた。


「結花に近寄んな」
「お前に何の権利があんだよ!」


ガッと亮君の胸倉を掴み鋭く睨みつけ、その行動に嫌な意味で心臓が跳ねた。だけど、もやもやする気持ちとは別に、何とも言えない悲しさが込み上げてくる。あの手紙も先輩からの物だったのだろう。気付くのが遅すぎた。


「少しくらい、話させてくれよ…」
「あのな、おま「亮君」」


私の声に亮君が振り返った。亮君だけじゃない、若や長太郎君、森下先輩も私に目を向けた。


「…お話くらい、いいでしょ?」





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