バカ、意識し過ぎ
「ねえ、宍戸」
「なんだよ」
「宍戸ってさぁ」
──なんかすっごく、かっこよくなったよね。
さっきの数学の自習中に柚衣に言われたこの言葉。
軽く動揺してる思考回路で
こいつ、真顔で…しかも一応授業中に何言い出すんだ。
って思ってたら、なんてね、って…、俺に向かって舌を軽く出してプリント顔を伏せた柚衣。
はあ?と拍子抜けした声が無意識に出てたんだろうな。
ったく、なんなんだよ!
まあ…、俺も情けねぇ顔してただろうから、丁度良かったといえば良かったんだろうけどよ。
終いに授業終わったあとには
「宍戸耳真っ赤だったよ〜」
って、へらっとした笑顔で言われたら、最初の言葉が嘘なのか本当なのか解んなくなってきたぜ。
「おーい宍戸、ジュースでも買いに行こうぜ」
「あ、おぅ」
…岳人か。
つか今昼休みだっけ。
「なんだよ、ぼけっとして」
「なんでもねーよ」
ふーん、ってつまらなさそうな岳人はいいとして…、なんか不思議な気分なんだよな。
さっきのあいつの言動が頭から離れねぇ…。
「おっ、日吉ー!」
ジュース奢れー!って、それでもお前は先輩かよ。…激ダサだな。
「にしても…、あっちーな」
近くの窓を開けようと、鍵に手をかけた。
「…あっ」