×浅き夢×
□×紅夢×
1ページ/6ページ
『昌浩…』
優しく俺の名前を呼ぶ声…
無くしたくないと願ったばかりに…
俺は…
「紅き夢」
真夜中…外の空気はひんやりとしている。
昌浩は隣に座っている青年に目をやる…
紅い髪と瞳…褐色の逞しい肌…
どれも全て「紅蓮」と同じなのに違う…
あの名前はもう呼べない…
『なんだ?なんか顔についてるか?』
昌浩の視線に気が付いた青年は不思議そうに昌浩を見る。
あぁ…こんなに近くにいるのに…君は全然違う…
昌浩は心を探られないようにっこり笑い
「ううん…別になんでもないよ…『騰蛇』…」
そうか…と呟き騰蛇はまた視線を庭先へとやる。
いくら泣いても…願っても紅蓮は戻ってこない…
でも…それは己が望んだ事…
ー辛い事…悲しい事…全部忘れて良いよ…
あの時…あの瞬間…
記憶も…思い出も…
全部消してしまったから…
俺に…嘆く資格なんかないの…わかってる…
でも…辛いよ…『紅蓮』…