二冊目の物語


□3800番・藍琉様キリリク作品。
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幻想界の夏は、現世の日本のそれとよく似ている。
正確には土地によって若干ズレがあるのだが、天空宮付近は湿度と気温が高い。

そんな季節。『彼』は冬と同じくらい、引き籠る。
「いつも寝てばかりでは、餓死しますよ?」
その『彼』の屋敷に訪れた六合は、寝台でぴくりとも動かない(魚河岸の鮪のような)男に声を掛けた。
「騰蛇」
瞼が面倒臭そうに開く。
「…………眠い」
一言言って、寝返りを打った。
「何か食べます?」
寝台の縁に腰掛けた六合が尋ねた。しかし、
「暑い……眠い……」
先程と大して変わらない事を呟くだけである。
しかも先程開けた瞼は既に閉じられていた。
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