二冊目の物語


□7979番・小萩さんリクエスト作品。
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濃い暗闇の中で……騰蛇は息を吐いた。
彼の両腕は頭上で鎖に繋がれている。

何処かで水の滴る音がした……。

騰蛇は小さく呻く。
此処に閉じ込められてから何度も考えた事を思った。《最後の戦争から一体何年経ったのか…………。》
こうして両腕を縛められ、生まれたままの姿に等しい恰好で此処に監禁されて既に相当の年月が経過している筈だが――。


その頃、牢獄の外に何者かが現れていた。


騰蛇の耳に錠前を外す音が聞こえた。
聞く事の無い音だと思っていた音を耳にして、身体が強張る。
《いや、年月など俺にはあって無い様なモノ…………》
不意に鎖が千切れ、前のめりに冷たい床へ叩きつけられた。
《何でもいい……》



自由になりたい!!!!



そう強く願った時、騰蛇は牢の入口に背の高い男の姿を見た。
「!!?」
逆光で表情が見えないが、口許が笑っているような気がする。
「怖がらなくていいんだよ」男は騰蛇に話し掛けた。
「俺は君の味方だから」
紫色の穏やかな眼差しが彼を見つめている。
「さぁ……一緒に行こう」

騰蛇――――……

男が名前を呼びながら差し延べた手は、暖かな光に包まれているように見えた。
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