二冊目の物語


□キリ番作品の失敗作。
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「騰蛇ァア!!!!」
罵声が麗らかな春の日をぶち壊した。
「待ちなって言ってんだよッ!!」
進行方向に背を向けて、全身黒尽くめの男が無言で高く跳躍して通り過ぎる。
一拍置いてそれを追い掛け通過していく、カーリーさながらの破壊の女神。
飽きもせずよくやるなぁ……それは朱雀以外の十二神将を含む周囲の感想だったりする。
当の本人は天敵を抹殺せんと毎日追い掛け続けているが。
追われる側は些か以上に辟易しており、極力朱雀を避けているらしい。
彼が頻繁に屋根の上にいるのを見掛けられるのは彼女の視界に入らない為かもしれない。
「今日こそは」
大地が刳れた。
「アンタを」
屋根瓦が一部吹き飛んだ。「叩きのめしてやるッッ」
裂帛の気合いと共に振り下ろした大剣は、一刹那前に騰蛇が着地していた大岩を叩き割った。
「……」
彼はいつもの如く、レンズ越しに無感動な眼で飛び散った瓦礫を見ていたが……ふと一点を見据え、瞠目した。
「――!」
砕いた大岩の、子供の背丈程もある破片が読書に没頭する密目掛けて飛んでいるのに気付いたのだ。
「密!!」
朱雀も気付いた。
避けて、と彼女が叫ぼうとした瞬間。
視界の端で空中の黒い影が方向転換した。
飛来する破片のスピードを凌ぐ速さで少年に迫る。
「悪く思うな」
低音の呟きを密の聴覚が捉えた時、彼の身体は横から強い衝撃を受けて木っ端のように吹っ飛んでいた。
「いっ――てぇ…………!?」
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