二冊目の物語
□8765番・鴾さんキリリク作品
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蒼龍は我が目を疑った。
これがあの騰蛇か。
彼を天空の胎内に封じ込めて幾星霜、忌まわしい存在は覚えていても皆が姿形を忘れかけていた。
危険分子と呼ばれた男は眠っている。
蒼龍は切られる事の無かった黒髪に触れた。
何もしてないのに綺麗だと思った。
長年日に当たらなかった白い肌も
端正な寝顔も
掛布からはっきり分かる身体の輪郭も
彼の全てが、愛おしい物に見える。
全く馬鹿馬鹿しい話だ。
男に、それも兇悪な危険分子にこの自分が惚れるとは……。
今はこれだけで我慢してやろう。
そう囁いて頬を撫でた。
だが……目覚めたその時には。
覚悟しろ。