二冊目の物語
□9100番・さささんキリリク作品
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シリアス注意。
満月の光は明るいから――暗闇に慣れた目には眩し過ぎる。
「お前は父親だったな……」
娘の傍で寝ている表情は穏やかで。
自嘲的な笑みが零れる。
俺に心からの笑みをくれるのは一人しかいない。一人でいい。
高望みはしない。水面の月を掴めないのは嫌と言う程知っているから。
けれど……せめて、見るくらいは。
見て、笑う。それだけのささやかな行為くらいは。
それこそ笑って、赦して欲しい。
幼い娘を思うように、若き息子を思うように。
お前をも想っている。
お前には届いてないのだろうな?
笑わないのだから。
どれ程愛しいと想っても、水面の月は掬えない。