一冊目の物語

□梅雨冷えのsonata
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その日の空気は湿った土の匂いがした。



「あ、雨だ」
窓から外を見ていた都筑の呟きを聞き取った騰蛇は顔を顰た。
昼間嗅いだ匂いは錯覚ではなかったらしい。

昨日までは暑い程だったというのにこれだ。
人間界の環境破壊による、温暖化が引き起こした異常気象が、こちらにも影響を及ぼしているのだろうか。

気温の急激な変化がいかに自分にとって脅威かを騰蛇はよく知っている。



獣系の十二神将はそれぞれ獣としての強味と弱点を併せ持っていた。
例えば白虎の場合、木天蓼(マタタビ)厳禁である。アルコール度数の高い酒より、木天蓼の方がベロンベロンになりやすい。

そして騰蛇、彼の場合は気温が敵だった。
湿度さえ高くなければ猛暑は耐えられる。
反対に極寒には全く耐性がない。そもそもつかない。更に季節の変わり目も寒暖の落差が激しい為、油断出来ない。

「寝るか……都筑」
「ん?」
「来い」
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