一冊目の物語
□3232番・芙蓉様リクエスト作品。
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「…………」
ぞくりとする程冷えた石の床。
背を預ける壁も同じ。
冷ややかな感触。
視界は黒に塗り潰されている。
目隠し布によって。
………………寒い。
腕に着けられた拘束具と脚に着けられた鎖以外は衣類らしい衣類を纏う事も許されない。
体を丸めて少しでも熱を奪われないようにする。
無駄でしかないが。
――誰かが近付いて来た。
立ち止まって鍵を開ける。耳障りな音を立てて鉄扉が開く。
誰かが足を踏み入れた。
それが近付くと無意識に身を竦めてしまう。
情けない、無様な反応。
体は正直だ。
何かが来る度に、暴力を振るわれ、体内を犯され続けた結果、萎縮するようになった。
引き倒される……。
腕は頭上で片手に縫い留められ、もう片方が身体をまさぐる。這い回る指に咬み付いて、食い千切ってやりたい。
熱が幾つかの箇所に集中し始める。
気持ち悪い。
声を漏らすまいとすればかえって嬌かしい吐息に変わる。
気持ち悪い。
低い、喉の奥で嗤うような声がする。
さっさと終わらせろ。終われ…………。
男が囁く。
聞き覚えの有る声で……。この……声…………は………………。
「こんな処で居眠りとはな」「…………」
蒼く長い髪がレンズ越しに見えた。