一冊目の物語

□2525番煉様キリリク作品。
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――都筑麻斗、という青年は騰蛇の運命を変えた存在だ。
彼の中でただ一つ、全てを差し置いて優先すべき事柄でもある。
事柄と言うのはおかしいので、別の言い方をすれば最優先事項なのである。
それでも分かりづらければ『自分を含めこの世に生きる全ての命より遥かに大切な者』と考えて頂ければ良い。――



名前を呼ばれた都筑は嬉しそうに眼を細めた。
「今、戻って来たんだよ」
「そう……なのか」
「懐かしくってさぁ」
「そうか……」

白虎が今来たら、余程驚くだろう。
普段は誰に対しても容赦無くスッパリと言い捨てる騰蛇がこんなにも歯切れが悪い。
「今は何処で暮らしてるの?」
「蒼龍が……部屋を」
「良かった〜土下座しといて」
「!?」
「騰蛇が路頭に迷ったらヤだからさ」
「お前は本当に阿呆だな……迷ったりする訳が無かろう」
「分かんないよ?」
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