女体化祭りだよ!全員集合!
*本編の話*
「…ねえ、ユーリ」
「ん―?」
軽く肩を叩かれて、振り返った。
声からして誰なのかわかっていたが、やはり胡散臭いおっさんのレイヴンであった。
どうしたのかと目で問いかけてみるが、彼はどことなくソワソワした様子で周りを伺っている。
まるで、人目を気にしているような行動にユーリは更に首を傾げた。
「…なんだよ?」
「いや、その…。戦闘中に、だな!ユーリちゃんの、え―とその、むむむ…むっ」
「む?…なんだそれ」
「む、む胸!!それがチラチラ見えて…っておっさんが見てるワケじゃないのよっ!目に自然に入るっつか、…とにかくそれで集中できないから、さっ」
話を切り出した本人は顔が真っ赤。
経験豊富だと思えば、意外と彼はウブだったらしい。
一方話の内容を聞いたユーリは、赤くなるでもなく軽蔑の眼差しを向けるでもなく、寧ろレイヴンの挙動不審の理由が解明され、ただただ納得の顔で頷いていた。
「…おっさんはね、そういうワケじゃないんだけどっ!とにかくユーリは女の子なんだし上着の前を開けるのはどうかと…。そうじゃなくても、中に何か着たり…ね?」
「でもよ、これ全部閉めちまったら苦しいし中に何か着るっつってもゴソゴソして気になるんだよな」
ぺらりと胸元の裾を指先で持ち上げる。
ユーリの服は体の線を強調するように出来ているのか、多少体を締め付けるようになっていた。
生地は上等な物ではないため、体格に合わせて伸び縮みしない。
レイヴンに異論を唱えるが、案の定彼はあきらめることをしなかった。
「…だっ、だけどさっ!戦闘中に服から…は、はみ出たら、どうすんのよ!!」
「心配すんなよ。今までにそんな事態はなかった」
「…じゃあ、旅の途中に、盗賊とかに襲われたらっ!?それこそ危険…」
「そいつら一発ぶん殴る」
レイヴンは気付かなかった。
声の音量が徐々に大きくなっていることを。
そして、その声を聞きつけ会話の内容を聞いた仲間達が背後に迫って来ていることを。
勿論レイヴンの正面にいたユーリ背後の仲間達の姿が見えていたのだが、彼女は気にすることなく会話を続けていた。
「だから、縛られて抵抗できなくさせられたらどうすんの!?その服一気にはぎ取られて、その胸鷲掴みにされ…ふぶおっ!?」
「…」
いきなり頭を何か重いもので殴られた。
ユーリではない。
ユーリは正面で腕を組んで立っているだけだ。
何事か、と周りを見渡すと案の定背後には仲間達の姿が。
その中の一人…天才魔導少女ことリタが大きな分厚い本を手に持って、しかももの凄い形相でこちらを見ていた。
今殴られたのは丁度こんな感じの本のようなものだと思う。
「…はれ…?」
「あんたね!!何ユーリにセクハラしてんのよっ!?最低よ、ありえない!!!」
「おじさま?…楽に死ねると思わないでね…?」
「…覚悟、してください」
「…シュヴァーン隊長…あなたって人は…」
「…乙女にセクハラは、いけないのじゃ!」
「ユーリをいやらしい目で見るな!」
「ワウ!!!」
女4人、男二人、犬一匹。
それぞれが、レイヴンを睨んでいた。
男よりも女性陣の方が恐ろしいが、中でもエステルは一番怖い。
「い、い、いぃゃあああぁあぁあっ!!!!」
ただの親切(?)のつもりが、セクハラ扱いでボコボコにされたレイヴンだったのでした。
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