novel
□ Piacere
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閉じ込められた籠の鳥
大きく広い世界を望む
Piacere
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「ハルさんは優秀なのですから、常に上を目指さなければなりませんよ。」
「ハル、何事も最後まで諦めてはならないよ。」
「はい。お父さん、お母さん。
私頑張ります。」
私は、大学教師の父、弁護士の母の間に生まれた。
幼い頃から、ピアノ、ダンス、書道など、毎日英才教育を受けていた。
父と母の娘として、恥じぬような優秀な子供になるのが、
私の義務だった。
「三浦さんはいつも一番で、先生嬉しいわ。」
「ハルちゃんは本当に偉いわね。うちの娘も見習ってもらわなきゃね。」
「三浦さんって可愛いよな。優しいうえに頭も良いし。」
「ハルちゃんって何でも出来て凄いね。」
先生、隣人、学校の男子、女子。
皆の評判はもちろん良かった。
親の耳に入ると、いつも私を誉めてくれた。
そして、いつも‥
「もっと頑張りましょうね。」
同じ言葉を繰り返された。
中学は、並森中へ行くはずだったが、親の勧めで私立緑中へ入学した。
学校が嫌いなわけじゃない。
友達もいるし、楽しくないわけじゃない。
家族と仲が悪いわけじゃない。
一般的な仲の良い家庭だと思う。
ただ、そんな毎日に埋没しているのが
「‥‥つまらない。」
ずっと親の言う通りに生きてきた。
これからも、優秀な子供として上を目指し続けていく。
‥‥‥だけど
もし、ワガママを言えるとしたら
そんな規則的な人生よりも
毎日何があるか分からないような
そんな驚きで満ちた人生を
私は
過ごしてみたい‥‥‥。