novel

□ サマーデイズ
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((イクトとあむは高校の同級生))

キーンコーンカーンコーン。


「イクト食堂行く?」
「あー‥行く。」
「もぅ。また寝てたの?黒板写さなくていーの?」
「ま。教科書読めば分かるって。」
「嫌味なヤツ。ノート貸してあげないよ。」
「貸して貸して。アイスかなんか奢ってやるから。」
「‥チョコのやつね。」

了解、と不敵な笑みを向けてイクトが立ち上がる。鞄から財布と携帯を取り出してポケットに入れた。
あむはママお手製のお弁当を小さな紙袋に入れて、イクトの後に続く。

「混んでないといいなー。」
「だな。」

教室を出て廊下を歩き階段を下り、食堂に向かう。






「‥やっぱ混んでた。」
「奥ならまだ空いてるんじゃね?ほら、あの柱の裏とか。」
「ホントだ。」
「んじゃ俺買ってくるから席取っといて。」
「わかった。」

イクトはメニューを頼みに、あむは席を取りに行く。
あむの方が勿論早くて、席に座り横のイクトの席に自分のお弁当を置いて席取りをした。
まだかかるなーと思いながら携帯を取り出し、用も無いのにピコピコとボタンを押してメールや画像を見て待つ。

「よいしょ。」
「あ、おかえり。」

イクトが帰ってきたので携帯を閉じてテーブルの脇に置き、自分のお弁当を前に置き直す。

「何買ったの?」
「カツ丼とうどん。」
「よく食べるねー。成長期?」
「知らね。じゃ食べるか。」
「あ、待って。お茶持ってくる。」

先に行っとけば良かった、と少し後悔しながら急いで備え付けのコップを持って食堂の角にあるタンクに行く。
コップでレバーを押して八分目までお茶を入れた。

「‥はい。どーぞ。」
「サンキュ。」
「いただきます。」
「次、授業何だっけ?」
「へ?んーと、漢文だよ。」
「めんどくせ。」
「サボんないでよ。あたしだけとか嫌だからね。」
「ハイハイ。」

むぅと膨れるがこんな会話は慣れてしまって、すぐに食事を再開する。

因みに言うとあたしだけ、と言うのは他に受ける人がいないという意味ではなくて、あむとイクトの2人で考えると、という意味。
お互いがいないと、授業を受けていてもつまらなくて仕方ない。

「ごちそうさま。」
「はや。もぅ食べたの?」
「あむ、お茶ちょーだい。」

あ。

自然にあたしのコップを取りお茶を飲む。
間接キスしちゃった‥。

「ん?」
「な、何でもない。」
「ふぅん。」

イクトはニヤリと笑ってみせると、見せ付けるように舌舐めずりをする。

「‥‥。」
「気にしてんの?」
「‥イクトなんてしらない。」
「はは。じゃアイス買って中庭のベンチ行くか。」

カチャカチャと音を立てながら食器を纏める。あむの分のコップも一緒に運んで流し前の返却口に置いた。

あむは恥ずかしい思いをしながらも、気を取り直し、紙袋を提げてイクトを追う。
入り口にアイスを1つ買ったイクトが待っていて、すいと手を差し出してくる。

こういうことを平気で出来るイクトを羨ましくも憎たらしく思い、力を込めてぎゅっと握った。


あつい夏は、まだ始まったばかり。





サマーデイズ



(一口もーらい。)
(ちょ、食べ過ぎじゃない?)
(口移しで返そっか?)
(‥‥この変態!)





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