novel

□ 病室は2人部屋で
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「ごほっ、ごほっ。」


窓を閉め切り、布団を顔が埋まりそうな程被ってベットに沈む。
時折、苦しそうに咳き込むあむは、風邪を引いてしまっていた。


「‥やだなぁ‥。」


風邪は嫌い。頭は痛いし息苦しいし、何より凄く寂しくなる。
こんな時、思い描くのはあいつの事ばかり。


「あむ。」


とうとう幻聴まで聞こえてきた。
幻聴が聞こえるあたしって‥と自分に苦笑した。


「あむ?」


思ってたよりも幻聴はしつこい。
それでもやっぱり嬉しくて、少し顔が綻んだ。


「‥あむ。」


また幻聴‥とは思えなかった。
幻聴にしてはやけに近い耳元から聞こえた気がした。閉じていた目を開けると、ベットに腰掛けているイクトの姿があった。


「イ、イクト‥?!」
「おはよ。あむ。」
「え、どうやって来たの?」


イクトが来るのを知っていた訳じゃないから、普段は鍵を開けている窓は閉め切ってるし‥。


「玄関。おまえの母さんが嬉しそうに通してくれたぜ?」
「ママったら‥。」


ママの嬉しそうな顔が容易に想像できる。ママはイクトを気に入ってるから。
あたしとイクトが付き合ってるのも、たぶん知ってる。


「風邪?」
「あ、うん。」
「そっか。‥大丈夫か?」


頭を撫でながら尋ねてくるイクト。あたしはイクトの手が気持ち良くて、さっきまで辛かったのが和らいだ気がした。


「うん。大丈夫だよ。」
「無理すんなよ。」
「うん。」
「俺ここにいるからさ、眠かったら寝ていいぜ?」


そう言われながらイクトに頭を撫でられると、次第に眠気が襲ってきた。
イクトの手は魔法の手。あたしをいつも助けてくれる。


「うん‥。あ、でも風邪移っちゃうから帰ってもいいよ?」
「あー‥。」


風邪が移っちゃダメだと思って言ったけど、言った後で後悔。
風邪を移すのも勿論ダメだけど、やっぱり帰っちゃうのは寂しい。

ぐるぐると2つの感情が渦巻いて悩んでいるあたし。
イクトは少し考えた後、そんなあたしを見てにやりと笑った。


「そしたらさ、ずっと2人でいられるな。」





病室は2人部屋で


俺以外に移したらダメだぜ?







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