novel

□ 不器用な
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「‥‥‥‥よし。」

携帯でメールを打ち、宛先と内容を再度確認する。


To 沢田 綱吉
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―――――――――――
こんばんは、ツナさん。
明日、午後6時に並森公
園に来てくれませんか?
大事なお話があるんです

待ってます。

   ――END――


期待を込めて、ハルは送信ボタンを押した。

送信完了の文字が浮かぶと、ハルはすぐに携帯の電源を落とす。
これで、もし電話やメールが着ても、分からない。
ハルは真っ暗になった携帯画面を見つめると、静かに携帯を畳んだ。





―――――――

現在、時刻は午後5時45分。
昨日から電源を落としたままの携帯は鞄に入っている。

「ちょっと早かったですね。」

元気に遊んでいた子供たちは家に帰り、公園には誰もいない。
ハルは公園に入り、ベンチに腰掛けた。
キョロキョロと周囲を見回すが、まだツナさんは現れない。

「少し、寒いです‥‥。」

腕時計で時間を確認しながら、両手で腕を擦って温めた。


時間は、無情にも刻々と進み、6時へと近付いていく‥‥





―――――

現在、午後6時47分。
ハルはまだ、公園にいた。
1人で、ベンチに座りながら。

「‥ハルは、諦めません‥。」

ハルは鞄をごそごそと漁り、中から紅茶を取り出した。
タブを引っ張り、紅茶をごくと飲む。
帰りに買っていた紅茶は既にぬるくなっていた。


ハルは帰る事無く綱吉が来るのを待つ。
電源が点いていない携帯に着ているメールに気付かないまま‥‥





――――――

「はぁ、疲れた。リボーンの奴、ちょっと厳し過ぎるって。」

綱吉は自宅の自分の部屋にいた。
先程までリボーンと特訓をしていて、つい先程帰ってきたところだった。

「そういえば、ハル何だったんだろ。行けないってメールしてから返信来ないし‥。」

まぁいいか、と綱吉は晩ごはんを食べる為に1階に下りる。
母さん晩ごはんは?、と尋ねようとしたが、先に母さんが心配そうな顔をして俺に尋ねてきた、

「ツーくん、ハルちゃん知らない?」
「ハル?何で?」
「さっきハルちゃんのお母さんから電話があったんだけど、ハルちゃんまだ帰ってないらしいのよ。」
「‥‥え?」
「何かあったのかしら‥。」


もしかして。
もしかしたらまだ公園に‥?

綱吉は昨日のハルのメールが気になった。
一応、見に行ってみようと考え、部屋に戻り上着と携帯だけを持って家を飛び出す。

時刻は、午後9時を回りかけていた。





―――――

「くしゅん!‥はひ、寒いです。」

ハルはまだ公園にいた。
帰らなかったのは、もはや意地だといっていいかもしれない。
ただ、今日、決めてしまおうと思ったから。
今の状況を打破する為に。
その為だけにハルは寒空の下、公園にいた。

ただ、1人を待ちながら‥‥


ハルが時間を確認する為に服の袖を捲り、腕時計を見る。
チクチクと針が進み、9時を迎えようとしていた。

(諦めろってことなんでしょうか。)

(ハルには、やっぱり無理だったんでしょうか。)

暗い顔をして捲った袖を戻そうとした時、公園の入り口から声が聞こえた。

「ハルっ!」

その時、時計の針は9時を告げた。


「ツナさん‥!」

来てくれた。
来てくれた。
ツナさんが、来てくれた‥。

「ハルっ!今何時だと思ってんだよ!皆心配してんのに!」
「‥皆じゃなくて、いいんです‥。」
「‥ハル?」
「ハルは、ツナさんがハルのことを考えてくれたら、それで充分だったんです‥。」

決めていたこと。
ツナさんが約束の時間に来てくれなかったら‥‥、

「‥、ツナさん。ハルは今日で最後にします。」
「‥何を?」
「ハルは‥、ハルは今日でツナさんを好きなのをやめます。もう、付き纏ったりしません。」
「え‥、ハル‥?」

泣いちゃいけない。
泣いたら決意が崩れてしまう。
ずっと、苦しかった。
好きで、好きで、こんなに苦しい恋は、もう耐えられない。

逃げてるって分かってます。
だけど、もう耐えられないんです。

「今まで、ありがとうございました。」
「ハルっ、――――」

ツナさんが何か言い掛けたけど、ハルは知らない振りをしてその場から逃げた。
走って、走って、一度も振り向かずに走り続けた。

「ツナ、さん‥っ!」

私はずるい。
自分が傷付くのが嫌で、逃げた。
本当は告白しようと思っていたのに、振られるのが嫌で逃げ出した。

そのまま家まで全速力で走る。
何度も足がもつれて転けそうになりながら。

ガチャ、バタン。

家に帰ると自分の部屋に駆け込んだ。お母さんが心配してるのが聞こえたけど、ハルはその日部屋から出ることは無かった。

疲れ果てて眠るまで、ずっと、ずっと、泣き続けていた。
嫌いになれない、あの人の名を呼びながら‥‥






『好き』は幸せばかりにはなれない。







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