novel

□ Buon giorno!
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俺はアジトへ帰る途中、ライバルファミリーに拉致されてしまった。

見つかった時には血が池のように俺の周りに溜まっていたらしい。
意識不明のなか、ファミリーの医務室で治療を受け、命は取り留めたが、大量出血の為、意識は戻らず昏睡状態に陥った。


1週間経っても意識は戻らず、ファミリーは皆諦めかけていた。




Buon giorno!




医療班の病室へと足を運ぶ。途中医療スタッフの医師と会った。


「あら、今日もお見舞い?」
「はい!」
「毎日ご苦労様。頑張ってね。」
「ありがとうございます。」


廊下を歩いていくと、「沢田綱吉」と書かれたプレートが目に入る。


「(コンコン)失礼します。」


ハルこと三浦ハルは、1週間経っても毎日ツナの見舞いに来ていた。


「おはようございます、ツナさん。
今日もいいお天気ですね!桜も咲いてますし、絶好のお花見日和りです!
こっちでも桜が見られるなんて思いませんでした。ツナさんが植えようと言ってくれたお陰ですね!
あと2、3日もすれば満開になってとってもビューティフルです!
また皆さんでお花見しましょうね!
ファミリーの皆さんは元気ですよ。

‥‥‥‥でも‥‥やっぱりどこか寂し‥‥そうです。
――――‥ツナさん。早く戻ってきて下さい。
ハルは‥‥、ハルはツナさんに笑ってほしいです。ツナさんがいないと寂しくて死んでしまいそうです。

――――(ずびっ)ごめんなさいツナさん。ハル弱虫でした。
ツナさんはずっと頑張っているのに。
ハルだってツナさんの分までボンゴレのお仕事頑張りますね!
ツナさんの為なら、何だって頑張っちゃいます!!
‥‥‥‥‥ではツナさん。またあ、」
「んっ‥」
「!」


ハルの呼び掛けに応じたのか、ツナに意識が戻った。ハルは涙を浮かべながらツナを呼ぶ。


「ツナさん!ツナさん起きて下さい!ツナさん!」
「(ん?声が‥‥聞こえる。誰だろ?)」


ツナは意識がまだ朦朧としている中、うっすらと目を開いた。


「(女の人?誰だろ。)」
「‥‥ん!ツナ‥ん!」
「(俺をツナと呼び、肩まで伸びている髪の人‥‥)京子‥‥ちゃん?」


ハルはぴたりと止まった。
ツナが呼んだのは自分の名ではなく、同じファミリーの笹川京子の名だった。
ツナはすでにまた眠りについていた。


ハルは頭の中が真っ白になったが、すぐに気を落ち着かせ、


「待っていて下さい。ツナさん。」


一言だけ残し、病室を後にした。





ハルは、走って、走って、涙を流しながらも、同じ幹部の京子の所に辿り着いた。


「ハルちゃん!?」


京子は驚いた様子でハルに近寄る。


「ハルちゃんどうしたの!?ねぇ、何があったの!?」


ハルは唇をぎゅっと噛み締めて、京子に伝えた。


「ツナさんが‥、」
「えっ?!」
「ツナさんが目を‥覚ましました。
お願いです、京子ちゃん。京子ちゃん一人でツナさんの所に行ってあげて下さい。早く!」
「えっ?」


京子はハルの言っている事が分からなかった。
ツナが目を覚ましたのなら、どうして‥


「ハルちゃんは?ハルちゃんも一緒に行きましょう。」
「駄目です!」
「!」
「ハルじゃ、駄目なんです。‥‥(あぁ、もう終わっちゃいますね。)京子ちゃん。行って下さい。」


ハルは無理矢理笑顔を作り、京子を見た。
ハルの必死な頼みに京子は


「うん。分かった。行ってくるね。」


ハルを気にしながらもツナの下へと向かった。


パタン。


戸が閉まる音と共にツナへと溢れだす思いと止まらない涙。


「ツナさん!ツナさん!‥‥ツナ‥さ‥ん‥。
(やっぱりハルじゃ駄目なんですか?ハルではツナさんの一番になれないんですか?ツナさん!大好きです!大好きなんです!!)」

ハルの心を表すように、激しい雨が降り出し、ハルの泣き声を隠すように延々と降り続けた。







 

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