novel

□ 進む道は違えども、
2ページ/2ページ




「‥あの、ツナさん。」
「ん、何?」
「‥えっと、その‥‥。」


決心したはいいが、何から話していいのか分からなくて戸惑う。
ハルは思考を巡らせながら、順序立てて話していく事にする。


「‥さっき、試練の時に‥歴代ボスに会ったんですよね‥?」
「あぁ‥。」


綱吉は薄らとしていた記憶を思い出す。
自身を囲んで立っていた九人の歴代ボス。それぞれが眩しい程の大空の炎を灯していた。
そして、プリーモは綱吉に面影が似ていたような気がする。他にも思い描く人物はいた筈だが、よく思い出せない。
うーんと考え込む綱吉に、ハルは思い詰めた様子で告げる。


「‥‥八代目ボンゴレボスは、‥ハルの、お祖母さんなんです‥。」
「ふぅん、そうなんだ‥‥って、えぇっ?!」


考え込んでいた所為で、危うく聞き流してしまう所だった。
だが、告げられた驚愕な事実がそれを許さない。

綱吉は驚きを隠せない様子でハルを見る。冗談かとも思ったが、ハルの真剣な様子から、それが事実である事を悟った。

(‥八代目‥。)

八世と呼ばれていた人物を綱吉は思い出す。
初代から順に並んでいた筈だから、八世は綱吉の左側、九世の前にいた人物になる。

(‥‥確か、女の人だったよな。)

黒髪でポニーテールで、顔に刺繍がある女の人を綱吉は思い浮かべる。
記憶は曖昧かと思ったが、継承は自分で思っていた以上に衝撃的だったらしく、どんな姿だったかを覚えていた。

(‥‥‥あぁ、そうか‥。)

綱吉が思い描いていた人物がやっと一致した。
八世を見て、誰かに面影が似ていると思っていたが、それはハルだったのだ。
最初は驚いていたが、ハルを見て納得する。容姿もそうだが、ハルの天心爛漫だが意志を曲げない正義感の強い性格は、ボンゴレボスの八世譲りなのかもしれない。


「‥‥あの、ツナさん‥?」
「‥ん?あ、何?」
「‥‥‥」
「あ、そっか。うん。ハルのお祖母さんが八世だったんだね。」
「‥‥はい。」
「驚いたけど、そう言えば似てるもんな。」
「‥‥‥は、い‥。」
「‥‥ハル?」


先程からハルの様子がおかしい。
どんどん塞ぎ込んでしまうハルを見て、綱吉は失態をしてしまっただろうかと焦る。


「ごめんハル、俺何か変な事言った?」
「‥‥いえ、その‥。」
「うん、‥‥。」
「‥‥‥その、ハルが‥、‥ボンゴレの家系だった事‥‥。」
「うん‥‥。」
「‥‥‥」
「‥‥もしかして、その事を気にしてる?」


綱吉の問いに、ハルは黙ったままだった。沈黙から、それが肯定だと綱吉は知る。
ハルの驚愕な事実は、思ったよりすんなりと受けとめられた。
十代目ボンゴレボスと言われ、数々起こった出来事に慣れてしまったからかもしれないが。


「あのさ、ハル。‥俺は、ハルがどんな家系だって気にしないよ?」
「‥‥」
「そりゃ、最初は驚いたけど、‥‥でも、ハルはハルだろ?」
「‥‥っ。」
「‥‥寧ろ、ハルと実は接点があったって考えると、‥俺は嬉しい、かな?」
「‥‥ツナさん‥。」


綱吉の素直な気持ちを聞いて、ハルは顔を上げた。
しかし、照れ笑いする綱吉を見て、ハルはまた外方を向く。
綱吉がきょとんとする中で、ハルはぼそりと言う。


「‥でも、そこまで吹っ切られると逆に複雑ですね。」
「え?」
「‥‥一応悩みましたし、やっぱりハルが八代目の家系じゃなきゃ、こんなふうに親しくなれなかったって事ですよね。」
「え゙、い、いや違うって!嬉しいとかじゃなくて、ハルはハルだって、そういう事が言いたいんで、家系がどうとか気にしてるわけじゃなくて、」


焦って言葉を並べる綱吉に、ハルは顔を背けたまま。
綱吉はどうしようと焦って悩んで、勢いのままにハルの肩に手を置いた。


「、俺達、もう家族みたいなものだろ。」


誤解を解いてもらおうと、はっきりと綱吉は告げたが、何も返事は無く、沈黙が続く。
綱吉は真剣な表情のままハルを見ていたが、その真剣な空気は数秒で壊された。


「‥ふふ、」
「へ?」
「ふふ、それ、何だかプロポーズみたいに聞こえますよ?」
「ハル‥?」
「ファミリーの意味に取った方が良いのか悩み所ですよね。‥乙女心は複雑なんですよ、ツナさん?」
「‥って、ハル?」
「ハルもツナさんが大好きですよー?」


ハルの少し照れたように笑う様子に、綱吉は漸く、外方を向いて拗ねたようなハルの様子が、わざとだった事を知る。
俺、何言ったっけ?!と、綱吉が慌てている隣で、ハルはそんな綱吉を見てくすくすと笑う。

(やっぱり、ハルの好きなツナさんです。)

綱吉が受け入れてくれた事が嬉しくて、これからも綱吉の隣で好きでいられる事が嬉しくて、ハルは心の中でそっと呟く。

(照れ隠しになっちゃいましたけど、凄く嬉しかったんですよ?)

そんなハルの呟きを知ってか知らずか、綱吉はハルを見て柔らかく笑う。
二人きりの空間は、いつの間にか優しく暖かい雰囲気に包まれていた。
そして、これからもずっと‥‥―――









進む道は違えども行き着く場所同じはず



きっと、二人は出会うべくして出会ったのだ。
血の繋がりよりももっと強い、心の繋がりは、決して切れる事はないだろう――‥‥‥









前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ