novel

□ 学園天国
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「すいませーん。三浦さんいますか?」


休み時間に、教室の扉から声が掛かった。
友達と談笑していたハルはその声に気付き、友達にちょっと行ってきますね、と告げてから扉へと向かった。


「あの、何でしょうか?」
「あ、三浦さん?私達文化祭実行委員なんだけど、全校アンケートで三浦さんがミス並森に決まったことを伝えにきたの。」
「はひっ、え、ほんとにハルなんですか?」
「うん。三浦さんが群を抜いて1位だったんだから!それでね、文化祭用の写真と、簡単なアンケートに答えてもらいたいんだけどいいかな?」
「えっと‥、‥はい、分かりました。」
「ありがとう!じゃあこのアンケートに答えておいてね。よろしく!」


パタパタと駈けていく実行委員を見送ってから、ハルは呆然としながら教室に戻る。
ミス並森に選ばれたことがまだ信じられなくて、票の数え間違いじゃないんでしょうか、とか考えながら自分の席へと足を向ける。
渡されたアンケートのプリントだけが、やけに現実味を帯びていた。

このアンケートがこれから起こる騒動に繋がるなんて、この時は、誰も考えもしなかった。







「じゃあお疲れさま!」
「はい、ありがとうございました。」


放課後に実行委員に連れられ、写真部に協力してもらい、文化祭用の写真を撮影した。
実行委員と写真部の人達に、ぺこりとハルはおじぎをする。


「後は私達で片付けておくから、三浦さんはもう帰っても大丈夫だよ。」
「あ、ハルも手伝います!」
「ううん、大丈夫。私達の仕事だし、それにお客様にしてもらったら私達が怒られちゃう。」
「えっと‥‥じゃあ、お言葉に甘えて帰らせてもらいますね。」
「うん。あ、机の上にアンケート置いといてもらえるー?」
「はい、分かりました。‥じゃあ、お先に失礼しますね。」


机の上にアンケートを置いた後、バイバーイと軽く手を振って、ハルは帰宅した。
暫くすると実行委員と写真部の片付けも終わった。
帰る支度をしながら、話はハルのアンケートへと移る。机の上のアンケートを囲むように集まり、まじまじと見始めた。

趣味や特技の欄を見て、各自感想を上げる。そのまま視線を移していくと、好きな人は?の欄に、います、という解答を見つけた。


「え?!だれだれ?!」
「もう付き合ってるのかな?」
「三浦さんが告白すれば絶対オッケー貰えるよねー。」
「ねー、誰だと思う?」


問題となった好きな人は?、の欄には、好きな芸能人やタイプを書いてもらう予定だったが、ハルは正直に、いますと書いてしまっていた。
相手は誰だろうとわいわいと話を盛り上げている彼女らの中で、実行委員長はぼそりと呟いていた。


「ミス並森の好きな人‥‥これはネタになるわね‥。」






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