dearm

□日の沈む頃
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それは僕が現世に来てまだ日も無い頃の出来事だった



日の沈む頃




現世へ派遣され、黒崎達と合流し、アランクルが来るまでの間、
調査もかねて“学校”へと行っていた。
正直つまらない。ずっと椅子に座り机で資料を写す。
そんな事務仕事を延々と繰り返すなんて、美学が無いね。
その作業が終わると、人は分かれて“部活”という所に行くらしい。
――――まぁ、僕達には関係が無いし、
周囲を調査した後、校門で集まることになっていた。

階段を下りていると、下から上ってきた少女とぶつかった。

「あっ、すいません。」

義体に慣れていないせいか、避ける事が出来なかった。失態だ。

「‥‥‥‥何か?」
「えっ、‥‥えっと」

ぶつかってきた少女は、やっと見続けていた事に気付いたようだ。

「―――その、綺麗だなと思って‥。」
「!そうだったのかい。こちらでも僕の美しさは理解できるんだね!」

‥‥‥あ。思わず口に出してしまった。

「えっと、じゃあ部活があるので失礼しますね。本当にごめんなさい。」

少女はそう言って去って行った。あぁ、名前を聞いておいても良かったかもしれない。
また会えるだろうか。

「―――――、僕らしくないね。‥‥まぁ、次に会えたら聞いてやらない事もないけど。」

再び階段を下り、校門へと向かう。

「弓親おせーぞ。何してたんだ。」
「ちょっと、‥可愛らしい子猫に会ってね。」
「はぁ?」

一角は訳が分からないといった顔をしていた。

まぁ、また会えるかなんて分からないし、僕からは行かない。

「また、‥‥ね?」

そう呟いて学校を後にした。





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