布団2
□紙飛行機はマッハ7
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路地裏で、見知らぬ男に詰め寄られながら、ふと昔を思い出していた。
私は、彼の、いつも私の数歩前を歩く癖に、ちらりちらりと私がちゃんと遅れずに着いてきているかどうか心配するところが好きだった。
そう、今も好きなのだ。
小さかった時から、野球にあなたをとられてからも、ずっと。
もしかしたら振り向いてくれるんじゃないかと思って始めたソフトも、長続きしないまま、グローブには埃がたまってしまった。
でも、いいの。
私がピンチの時、あなたはあの頃のように飛んで私に駆け寄ってきてくれる。
「ぎゃあ!」
男の手が私に触れようとした時、突然するどい悲鳴をあげた。
白球が、暴漢の後頭部に直撃したのだ。
優しい彼のことだから、きっと全力で投げた訳ではないのだろうけど。
助けが来てくれたことと、それが彼であったことに涙が溢れそうになる。
紙飛行機はマッハ7
さあ早く。
光の速さで飛んできて。