布団2
□タオル王子
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お昼休みに、校庭を走り回る男子を眺めていた。
お弁当を食べた後で、しかもこのくそ暑いグラウンドのど真ん中で、よくあんなに動けるなと感心しながら、私の目線は、ある男子をとらえた。
「早くボールよこせっつーの!」
(蛇骨くん…)
女の子みたいな顔をしているけど、彼は、れっきとした優しくてかっこいい男の子だ。
私の、片想いの相手。
お昼休みには、いつもこうして外に出て遊んでいるから、私も、いつもこうして彼を見ていた。
「あっ!」
みとれてしまって、思わず窓のふちに置いていたタオルを落としてしまった。
運が悪いことに、風に吹かれて校庭の方へ行ってしまう。
時計を見ると、お昼休みは終わろうとしていて、取りにいく時間は、残っていない。
また、次の休み時間にでも取りにいこう。
そう諦めた時。
「誰のだ、これ」
ぎくっとして、恐る恐る声のする下を覗いた。
案の定、蛇骨くんたちが、タオルを持って辺りを見回している。
いつの間に、サッカーを止めたのだろう。
「!」
ぱっと顔をあげた蛇骨くんと、目があった。
そして、彼は私とタオルを見比べると、にこっと笑った。
「早く上がろうぜ!」
そう仲間に言うと、タオルを握りしめて、彼らは玄関の中へと入っていった。
タオル王子
きちんとたたんで返されたタオルは、もうあなたの香りがした。