布団4

□隣人を愛せよ
1ページ/1ページ


低血圧の私を苛める、毎朝やってくる魔の起床時刻。
暖かい陽気がカーテン越しにわかる柔らかい日差しは好きだが、5分もすれば先日引っ越してきた隣人による恒例のドタバタが始まるために、いつしか苦手意識が芽生えてしまった。



どうやら彼女は学生らしい。
このマンションから程近い大学から出てくるのを、以前仕事の帰りに見かけたことがある。
親元を離れて越してきたようで、隣に出入りする人間は彼女と同年代の者ばかりだ。



私も数年前まで通っていたのかと思うと妙に親近感が湧いた。



(おや、)



いつもなら、目覚ましの音が止まればそれなりの生活音が聞こえてくるはずなのだが。
耳をすましてみても、身じろぐ音すら拾えない。



(まさか二度寝か?)



どうする、どうする。
私の記憶するところによると、彼女はぎりぎりながらも朝は必ず登校している。
寝癖を直す時間も、弁当を作る時間も必要なはずだ。



「………」
(ああもうどうして私がこんなことを)



インターホンの前で、私は彼の有名な偉大なる父の言葉を思い出した。



隣人を愛せよ



(ぴんぽーん)



「…、(もう一度押すべきだろうか)」
(はあい)
「!」
「あら、お隣りさん!おはようございます」
「お、おはようございます」
「どうかしました?」
「いや、あの、学校はいいんですか」
「ああ!一限目は休講なんですよ」
「きゅ、…」



報われずとも愛せよ!




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ