布団4

□ネガポジシンキング
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一生を共に生きるなんて、生半可な覚悟ではやっていけない。
1人で生きるだけでも辛いことや挫けてしまうことはたくさんあるのに、それからの人生もう1人分背負う羽目(なんて言い方をしたら怒られるだろうか)になるのだ。



例えば私が食べたいと思う菓子を彼女も食べたいと思うかもしれない。
そしてそれは世に2つとない美味なる菓子で、命からがらの末に手に入れたものとする。
私は果たして快く差し出すことができるのだろうか。



「…、それは、私が食い意地張ってるって言いたいの?」
「そんなことは言っていません」
「言ってるのと一緒だよ!」



こんなくだらないことで笑い合える温かい幸福だって明日にはなくなってしまうかもしれないと思うと、私は冷や汗が出るほど怖くなる。



朝、何気なく起きて隣にいる貴女の息が止まっていたら。
買い物に行った貴女が帰ってこなかったら。
今まさに細胞レベルの段階で病魔に侵されていたら。



私の目の届かないところで彼女にもしものことがあったなら、私は一体どうすればいいんだ。



「心配症だなあ…」
「想定できるものは全て可能性があるものですよ」
「じゃあ前向きな想定をすればいいのに」
「例えば」
「そうね、明日は晴れる!とか」
「ちいさ…、いえ、とても幸せな考え方ですね」
「でしょ!ちなみに」
「はい?」



明日も大好きよ、トクサのこと。



未来がどうだかは知らないが。
今目の前で微笑む貴女は、とても美しかった。



ネガポジシンキング



前向きな君が一緒なら。



(ていうか馬鹿にした?馬鹿にしたの、今)
(いえいえ、さっきから被害妄想も大概にしてください。いやですよ、全く)



こんな世界も悪くないか。




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