布団2
□君の後ろ姿がすき
1ページ/1ページ
「坂本さん」
ん、と振り返ったあなたは、いつもよりとても素敵に見えた。
これできっと最後だから、脳が無意識に美化しているのかもしれない。
誰だって、最後の最後くらい美しく飾りたいものね。
「何じゃ」
言いたいことが、ある訳じゃない。
でも、何も言いたくない訳でもない。
「………」
確かに、言わなければならないことが喉のそこまででかかっているのに、何と言葉にすればいいのか、自分でわからないのだ。
愛する人と、もう2度と出会えない。
こんな時、映画やドラマではぴったりな台詞がたくさんあるのに、テレビ大好きな私には1つも思い浮かばなかった。
どれも、しっくりこない。
さよなら、またね、また会いましょう?
ずっと愛しているよ?
違う。
こんなこと、彼に言ったって笑われるだけ。
「あのね」
君の後ろ姿がすき
男らしくて、たくましくて、そんな背中が見れなくなるのは残念だわ。
あっはっは。
なんじゃ、そら。
…さよなら、またね。