布団2
□愛ってなに?
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今週もまた1組、新たな男女のペアが登校してきた。
私はそれを、3階の窓から頬杖をついて見ていた。
(朝っぱらから熱いねー…)
この前まで、しゃべっているところなんか見たことなかったのに、今では本当の恋人たちのように、仲睦まじく語り合っている。
人の愛なんて、簡単なものだ。
昨日までの赤の他人が、今日から運命の人に昇進されるのだから。
「お、朝っぱらから熱いねー」
後ろから突然現れた銀髪が、ずいっと窓から身を乗り出した。
ふわりと、煙草の匂いがした。
「私も彼氏ほしー、なんて考えてたろ」
「人の愛なんて、所詮偽善だわって考えてたの」
「ちょ、お前どこのすりきれた風俗嬢?」
笑いながら、こちらを振り向く。
「まあ、色恋もいちご牛乳と一緒だな。甘ーい一時があると思ったら、糖尿病っつう怖ーいしっぺ返しが待ってんだ」
眼下の彼女たちも、いつかしっぺ返しが来るのだろうか。
(あんなに楽しそうだけど…)
それは見捨てられることかもしれない。
望まない妊娠かもしれない。
どんなことが、いつ、どこで返ってくるのかわからないが、それでも人々は愛を求める。
皆は、先生は怖くはないのだろうか。
「…先生」
愛ってなに?
そうだなー。
お前が大人になったら、教えてやるよ。
(風俗嬢、それは全人類最大のテーマです)