布団
□思い出すあなたは素敵
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朝食をとっているときに、ふと昔の人を思い出した。
あの人が好きだった角砂糖を目にしてしまったのが、原因だと思う。
積み上げては崩して、紅茶やコーヒーに入れては飲んで、時には直にかじりつくこともあった。
あの頃、私はあなたがいるのが当たり前だと思っていた。
私たちが60億分の1で出会ったのは、奇跡だというのに。
あなたが生まれたのは、それ以上の奇跡だというのに。
そんなことも忘れるくらい、当たり前だと思っていた。
(…どうしてかな)
どうして、今になって私は懐かしいことを思い出しているんだろう。
何が、あなたを過去の人にしてしまったんだろう。
いつから、あなたの思い出を涙なしで振り返ることが出来たんだろう。
あなたがいないことで、世界は何が変わってしまったんだろう。
バターをスプレッダーですくって、こんがりと焼けたトーストに押しつける。
思い出すあなたは素敵
いつか、記憶に残るそんなあなたの偶像すら消えてしまうのが怖い。