布団
□空は晴れていた
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もしかしたら、私はおかしいのかもしれない。
世界でどんなに無差別殺人が起こっていようと不安になることはないし。
恋人が殺されたことより、飼っていたペットが老衰で死んだことのほうが悲しい。
どうしようもない。
そう、どうしようもないのだ。
愛犬の死も、竜崎の死も。
生きている限り、いつかみんな死ぬ。
彼の場合、それが少しだけ早まっただけだ。
悲しむことなんてひとつもない。
それなのに。
今日もいつもどおりの日常のはずなのに。
何かがいつもと違う。
空は晴れているのに、ちっとも暖かくないし。
食べ物も飲み物も味がない。
それに、以前の自分のことが、思い出せなくなっていた。
もとから、こんなに無感情な人間だったのだろうか。
空は晴れていた
彼がいないことで、私はいったい何が変わってしまったんだろう。