布団
□横浜リリー
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港町で暮らす女に恋をした。
照れ隠しのつもりで、俺は気取ってその女をリリーと呼んだ。
リリーは、弱くて馬鹿な俺を愛してくれた。
気が強いうえに頑固で意地っ張りで、そのくせ涙もろい女だった。
そんなリリーを、俺も愛していた。
死ぬんじゃないかというほどの怪我を、何度か負ったこともあった。
汽車道の橋の欄干に登り、「何もかも終わったら、俺についてこい」と海に向かって叫んだこともあった。
リリーの前では、俺は何でもできた。
何にでもなれた。
嘘を現実にすることも、現実を嘘にすることも、すべてはお前のため。
お前を泣かせるものは、俺がなくしてやる。
だから、リリー。
ずっと笑っていてくれよ。
例え、そのドアが開かなくても。
横浜リリー
隻眼に映るお前はいつも美しすぎて、俺にはもったいないが。