布団3

□昔々のお話です。
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昔々あるところに、樋口与六という小さな男の子がいらっしゃいました。
与六は好奇心が旺盛で、日頃から危険を冒しなさっては父母をお困り申し上げていらっしゃいました。



ある日、いつものように与六が裏の山へ遊びに行きなさいますと、見慣れない娘が梅の木の下に座っておりました。
かのかぐやが目の前にいらっしゃるのかと思う程大層美しい女子で、山吹の衣を覆う髪は艶を放ちながら黒々と伸び、頬は微かに赤く染まり、梅は娘を恐れるように咲いております。
どうにも堪えられなくなり、与六は娘に問いなさいました。



「どこからいらっしゃったのか」
「この見事な梅も自らがどこから参ったのかも知らないのに、私などが知りましょうか」



そう言って、娘は優しく微笑んだまま花を見上げなさるばかり。
与六はお困りになって、再度おっしゃいました。



「明日も、梅は咲いていらっしゃるのか」



娘はやはり微笑んで、「はい」と申し上げました。



昔々のお話です。



与六は待ち続けました。
いつまでも、いつまでも。




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