布団3

□あなたのお父さんはね、
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今日のお天気は晴れ。
お日さまがきらきらと輝いて空には白い小鳥が飛んでいます。



私の旦那さまはと言うと、外で黙々と洗濯物を干しています。
樹と樹の間に張られたロープへ、バスタオルやらベッドシーツやら昨日着たワンピースやらを、やっと手慣れてきた様子で掛けていっています。



「手伝おうか?」
「必要ありません」



あらまあ、怖がらなくて大丈夫。
口ではああ言っているけど、本当は優しい人だから。



そうよ、だって私の大好きな人だもの。



あら、お花のいい香りがふんわりと漂ってきたわ。
きっとまた柔軟剤を入れ過ぎたのね。



ねえ、知ってる?
あの人ったら、肌触りがいいからって毎回キャップにいっぱい入れるのよ。
おかげで減りが早くて困っちゃう、って私が買いに行く訳じゃないんだけど。



うん、そうなの、昨日のケンカはやっぱり私が負けちゃった。
「近くのお店まで歩くくらい平気だから」って言うのに、「絶対に許しません」の一点張りだったの。
あなたが眠った後も譲らなかったんだから。



最後には「自分の立場を弁えなさい」ですって。
まったくもう、これじゃ完璧に外出禁止ってことじゃない。



ううん、あなたのせいじゃないの。



私が今までに無茶をしてきたから、あの人が心配するのもしょうがないことだわ。
私はあなたがお腹に来てくれる前にたくさん危ないことをしてきた。
まあ、それは彼も同じだけどね。
だから、どうしても心配性になっちゃうんだと思う。



家にずっとこもりきりなのはちょっぴり息が詰まるけどね。



あ、今食べてるプリンはね、その融通が利かない旦那さまが仲直りの印に、って作ってくれたのよ。
私たちの為にお砂糖は控えめにしてくれたみたい。
私はどちらかというと甘いほうがよかったんだけどな。



でもそう言うとあの人がしょげるから2人だけの内緒よ。



うふふ、どんな顔をしておやつを作ったのかしらね。
レシピとにらめっこして、これは体にいい、悪いって唸る様子が目に浮かぶわ。



「洗濯物、終わりました」
「ありがとう、トクサ」
「いいえ、それより気分はいかがですか」
「うん、とってもいいよ」
「そうですか」



花の匂いが染み込んだ温かい手が、愛しそうに大きなお腹を撫でた。



この手が直接あなたに触れられたらいいのにな。
頬を緩ませて幸せそうに微笑む顔を、直接あなたが見られたらいいのにな。



もしもし、私の赤ちゃん。
聞こえていますか。



あなたの
お父さんはね、




(家事が苦手で、)



「そういえば、何か話していたようですが」
「内緒よ、内緒」
「何故ですか、教えてください」
「どうしよっかなあ」
「…もういいです」
「ごめんごめん、拗ねないで」



(気難し屋で、)



「まあ、一緒に買い物へ行ってくれたら許します」
「…、それって」
「行くんですか、行かないんですか」
「行く!」



(ごめんなさい、が不器用な人)




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