布団3
□精神安定剤キミ
1ページ/1ページ
「ぼと!」と音を立てて何かが落ちた。
何か、なにか、ナニか、何だ?
足元を見ても後ろを振り返っても、ただアスファルトが続いているだけで何も落ちてはいない。
強いて言うなら、ごみくずや石ころや電信柱(は立っている、か)が静かに置かれているくらい。
(ふむ)
気を取り直して前を向く。
息を吸った。
おや、夕焼けが滲んでいる。
(…悲しいことなんかあったっけな)
思い当たる節と言えば、そろそろ月のものが来るところか。
ああもう憂鬱だな。
また腹痛に悩まされるでしょう週間が始まるのか。
あ、これだ。
きっとそうでしょ、この空虚感はこれのせいに違いない。
「と言う訳で来ました」
「どういう訳です」
苛立ちを隠さないまま(隠す気もないのだろうが)、トクサが膝を人差し指で忙しなく叩きながら言った。
つくづく彼にはカルシウムが足りないのではないかと思う。
全くいらいらしたいのは私のほうですよ。
「つまりね」
精神安定剤キミ
(うふふ、好き!)
(…、答えになっていませんが)
(どういたしまして!)
(褒めてもいません)
あなたといれば、空いた心も満たされる。