布団3

□攻略困難な君
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タナッセという人物は素直じゃないにも程がある。
好きという気持ちを真逆に表現してくる所謂ツンデレ(むしろツン)。
ひねくれ者になってしまった原因は環境にあるけれど、それにしてもあれはひどい。



例えば、朝の挨拶を交わすとしよう。



「おはよう」
「やあ、寵愛者殿。今日も見るに堪えない顔をわざわざお披露目頂いてありがとう。それにしても先日の舞踏会の話はご存知か。何ともみすぼらしい乞食が迷い込んできたらしく、滑稽だったと皆が噂していたぞ。ああ、勿体ないことをした、私も見たかったものだ。おや、そういえば寵愛者殿は舞踏会へ行かれたのではなかったかな?どうだ、それらしい者はご覧になったか?」



このように、「おはよう」と言っただけで剣山のような嫌味をぐさぐさと突き刺してくるのだ。



長々と世間話をしているようだが、彼が言いたいことはずばりこう。
「お前は舞踏会で恥を晒してきただけだ」、と。
それを皮肉たっぷりに盛りつけてプレゼントしてくるところが彼への風当たりの悪さを呼んでいるのだが、当の本人は改善する気などこれっぽっちもないらしい。



「何だ?言いたいことがあるなら、その口を使って言ってみろ。ははあ、それとも言い返す言葉すら思い浮かばんか?」



さて、ここで私がいつものように泣きそうな顔をすれば、「い、いや違うんだ、そういう意味ではなく(ならどういう意味だと、手元に本があったなら投げつけたくなる)て…」と口篭るのだが、残念ながら見飽きてしまったし今日はそういう気分ではない。



果たしてどうしてやろうか。
やられっぱなしというのも性に合わないし、泣き落としではなくたまには仕返しをしてやりたい。
まったく、本当に私のことが嫌いで目障りなら口を利かなければいいじゃないか!



(ん、そういえば彼、)



「…ねえ、タナッセ」
「な、何だ」
「さっき、言いたいことがあるなら口を使えって言ったよね?」



ぎょっと青ざめた彼に、私は満面の笑みを向けた。



攻略困難な君



「愛しい」と言えば「憎い」と言い、「憎い」と言えば「愛しい」と言う。



(そんなあなたへ、)



「わあああああ!」
「こら待てタナッセえええ!!」



(ハグ&キスで)
(強制ラブ注入!)




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