CP小説C
□低血圧
1ページ/1ページ
やってしまった……。ただ少し立ちくらみがしてふら付いてしまっただけだったのに。
しかしそれがこの人の前だったから……こんな大事になってしまったのだ。
「お妙さん、大丈夫ですか!?」
「…別に平気だと何回言わせるんですか」
「しかし……急に倒れそうになるものですから」
「だから、少しくらっとしただけです」
そう言っても目の前にいる人は心配そうに眉を垂れさせているだけで、私が横になっているソファーから離れようとしない。
「もう大丈夫ですから…、近藤さんはお店に戻ってください」
「お妙さんを放って置いて戻ることなど出来ません。それに俺はお妙さんを目当てにここに来ているんですから」
お妙さんがいないと戻る意味などありませんよ、と続ける近藤さんにはあ、と気づかれないようにため息をついた。
おりょうたちもおりょうたちだ。いくら近藤さんだからってお客には変わりない。それなのに「近藤さんがいるなら大丈夫ね」と自分たちは何もせずそのままお店に戻っていってしまうなんて……。
はあ、とまたため息をつけば「お妙さん?」とひょっこりと顔を覗かれた。
「!、な…なんですか?」
「あまり無理はせんで下さいね」
「え……?」
「こういう仕事柄仕方のないことなのでしょうけど…、お妙さんには素敵な仲間がいらっしゃるんですしたまには周りに甘えてもいいんですよ?」
「…………」
にこりと笑みながら言う近藤さんに私は何も言えなくなった。
というかそれをアンタが言うか。自分にだって素敵な仲間はいるのに、いざとなれば自分一人で答えを出して無理するくせに…。
沈黙になったかと思えばがちゃり、と事務所の扉が開いた。
「あ、お妙具合はどう?」
「別に平気よ。すぐ戻るわ…」
扉からやってきたのはおりょうだった。起き上がろうと体を起こせば「ああ、いいのよ」とおりょうの声。
「え…?」
「店長が今日はもう上がっていいって」
「え、どういうこと…?」
「今日はお客の入りも少ないし、大事を取って休養しなさい、ですって」
良かったわね、とにかりと笑うおりょう。冷蔵庫から氷を取ると「お大事にね」と言うと事務所から出て行った。
起こしかけていた体が間抜けでぽかんとしてしまった。休みをとれ、と言われても……。
気が抜けてしまってそのまま、またぼすんとソファーに体を預けた。ああ、本当拍子抜けだわ。
「お妙さん?大丈夫ですか?」
「……平気です。ちょっと拍子抜けただけですから」
「帰らないんですか?」
「…帰りますよ」
そう返せばそうですか、と近藤さんの声。
「……近藤、さん」
「はい?」
「さっき……」
「ん?」
「さっき、周りに甘えてもいいって仰いましたよね?」
「…ええ」
「じゃあ…甘えてもいいですか?」
掛けてある毛布を顔の半分まで持ってきて眼だけで近藤さんを見れば、一瞬近藤さんはぽかん、と口をあけた。
「え……、あの、それは…」
「私を家まで送っていって下さいな」
「そ、それはもちろん!!当たり前じゃないですか!!!」
さっきのぽかんとした間抜け面はどこへいったのか今はいきいきとした表情をしている近藤さんに、くすりと笑みを漏らした。
愛してくれているという幸せにさっきとは違うめまいを感じた。
****
久々近妙!
そして少し素直なお妙さん!ちょっとずつ自分の気持ちに気づいてきてるんだと思います。
近→→(←)妙な感じでしょうか?
100413