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□ベタな出会い
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食事当番であるハクに買い物を頼まれ、メモを見ながら買い物を済ませた。両手一杯に袋を持ちながら歩いて曲がり角を曲がれば、どんっと誰かにぶつかった。


「痛たたた」

「痛っ……、あっ、ごめん!大丈夫?」


その場に尻餅をつき、ぶつかった箇所を手で押さえていれば相手は慌てたように私に近づいてきた。


「いったいわね!一体どこ見て歩いてるのよ!!」

「ご、ごめん…!立てる…?」


ムッとしながら相手を見れば心配そうに顔を歪めている………女?
男か女か一見ではよくわからない相手はパンパン、と優しく私の服の汚れを払うとはい、と手を差し伸べた。


「……お礼なんて言わないわよ」


手を受け取り立ち上がると自分の服を払いながら相手を見る。
すると相手はびっくりしたように目を見開くと次にはにっこりと笑った。


「別にお礼はいらないよ。
君が大丈夫ならオレはそれだけで十分!」

「オレ……?アンタ男?」

「んー、一重に男ってのは言えないな…。男:女=9:1って言えばいいのかな」

「……何よそれ」


意味がわからない、と続けながら腕を組み相手を見ればだよなぁ…と相手は困ったようにがしがしと自身の頭を掻いた。
黒髪に青いメッシュが入っており、左は青で右は赤の左右違う目の色。私よりずっと高い背。性別を聞いてもいまいち意味がわからなかった。


「まあ、難しいことは置いといて…。
怪我とかしてない?」

「は?…ああ、まあ」

「あっ、肘!」

「え?」


相手は私の肘を指差すと慌てたように私に近づいてきた。肘?と見てみればそこには赤い血が滲んでいた。


「あー別にこのくらい…」

「ダメっ!怪我を甘く見てちゃいけないんだよ。バイキンが入って危なくなるかも知れないんだから」

「いや、大丈夫だから」

「ダーメっ!とりあえず傷口を洗わなきゃ……。行こう!」

「え、ちょっ」


手を引かれ私は相手の後を追う。
そしてやってきた先は近くの公園。入り口近くにあった水道で傷を洗うと相手はポケットからハンカチを取り出すと水を拭きながらくるくるとそれを私に肘に巻いた。


「…よしっ!これでとりあえずはいいかな…。でもちゃんと消毒しないとダメだよ?」

「……お節介な奴」

「女の子に怪我させたまんまじゃオレが気になるからね」

「何よそれ」


相手が膝立ちをしていることから今は私のほうが目線が上になっている。
私の顔を見上げながらニッと笑う相手に私は顔を逸らした。


「……アンタ、名前は?」

「オレ?オレの名前は欲音ルコ!」

「欲音ルコ……、」

「君は?」

「亞北ネル」

「ネルか!よろしくなっ!」


嬉しそうに顔をくしゃりとさせ笑うルコにまた顔を逸らしふんっと鼻を鳴らした。
その時「プルルルル」と私の携帯が鳴った。誰かとディスプレイを見ればそこには『弱音ハク』と記されている。
帰りの遅い私を心配して電話してきたんだろう。出てみれば予想したとおり涙声の弱弱しい声が聞こえてきた。


「……買い物は終わってる。…え?わかってるわよ。うん、…すぐ帰る。ああ、もう泣くなって言ってるでしょ!」


切るわよ!と最後に言い電話を切った。くすくすと笑う声が聞こえそっちを見てみればルコが口元に手を置きながら笑っていた。


「……何」

「あ、ごめんごめん。聞き耳立ててるつもりはなかったんだけど…」

「別に構わないけど」

「ネルって素直じゃないんだな」

「……はっ?」

「そういうのも可愛いと思うけど」

「っ!?」


ぽん、と私の頭に手を置きながらにっこりと微笑むルコ。かあ、と赤く染まった顔を隠せず面食らった。


「っ、じゃ…じゃあ私行くから!」

「あ、うん…。あっ、ちょっとネル!」

「…何よ!」

「これ、忘れてるよ」


ルコは買い物袋を掲げながら首を傾げた。いつの間に持っていたんだろう、と思うのと同時に中々気が利く奴だと思った。


「…わかってるわよ!!」

「あ……、ネル!またな!」


バッと買い物袋を取るとその勢いでその場から走り去る。
後ろからはルコの元気な声が背後で聞こえた。


【ベタな出会い】
(ベタな恋の始まり)




***
書いてみたかったルコ←ネル。
うちのルコはやっぱり天然たらしですね笑


100923


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