CP小説A
□ショートケーキ
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「新八ィィイっ!」
春の日射しが入り込んでくる午後、神楽の怒号が万事屋に響いた。
「なっ、どうしたの神楽ちゃん」
「どうしたの神楽ちゃん、じゃないアル!お前私の取っておいたケーキ食べただろ!」
「え……?なん」
なんで僕が、と言おうとした途端昨日の事を思い出す。
そういえば昨日、むしょうに甘いものが食べたくなって食べちゃったんだっけ?
あれ銀さんのかと思ったんだけど神楽ちゃんのだったんだ…。
「何シカトぶっこいてんだよ、ああん?」
「ちょっ、神楽ちゃんキャラ変わりすぎなんだけど!」
ヤンキーばりに首を曲げている神楽ちゃんに思わず後ずさってしまった。
うーん、でもどうしよう……。
神楽ちゃんてば食い意地張ってるから食べ物が絡むとしつこいんだよなあ…。
「せっかく私が楽しみに取っておいたのに…最悪アル」
「ごっごめんね、神楽ちゃん」
「もういいアル。代わりにでっかいホールケーキ買って来いヨ。
イチゴがたっくさんのってるやつな。それ買ってくるまで許さないアル」
「え゙っ!?」
「それと私に喋りかけんなよ」
ふんっと背を向け爆弾発言を落とすと、神楽ちゃんはすたすたと歩いて行ってしまった……。
でっかいホールケーキと言っても僕にそんなケーキが買えるお金があるわけない。
でも買わなきゃ神楽ちゃんの機嫌は直らないしな……。
溜め息をつきながら歩いていくと『お金のかからない簡単ケーキの作り方!』という本が目に入った。
****
そして数日後、新八はいつものように万事屋にやってきた。
「神楽ちゃーん、ちょっと来て」
そう叫べば小さく足音が聞こえてきた。
『何アルかダメガネ』
「いやこんな近くにいるのに筆談とか悲しすぎるんだけど」
『喋らないって決めたネ』
「…そりゃそうだけどさ。
それより今日は神楽ちゃんにプレゼントがあるんだ」
『?』
わざわざクエスチョンマーキまで書かなくても、という言葉は呑み込み持ってきた箱を開ける。
「……あっ!」
「お店のような綺麗なケーキじゃないし、イチゴもたくさんのってないけど……これで許してくれないかな?」
照れ臭そうに頬をかく新八が神楽を見れば、彼女の視線は箱の中にあるお世辞でも綺麗とはいえないケーキに向けられている。
「これ…」
「作ったんだ…。初めてだったからてこずったけど」
「バカかお前。そんな手が傷だらけになるまでするなヨ」
「でも神楽ちゃんと仲直りしたかったからさ……許してくれる?」
そう問い掛ける新八に神楽はにっこりと笑いかけると、新八に飛び付いた。
090305