CP小説B
□仲直り
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「新八ィー」
「………」
「しんっぱっちー」
「………」
「オイ、ダメガネ!」
「………」
いくら神楽が呼びかけても新八はずっと背を向けたまま振り返ろうとしない。それもそのはず新八は今日発売されたばっかりだというアイドルお通ちゃんの2ndアルバムに聴き惚れているのだ。
無駄な雑音をシャットアウトする為イヤホンを耳につけ、体は音楽プレイヤーの方を向き、目はアルバムのジャケット…。正にお通ちゃん仕様となっているのだ。
最初は神楽も「また始まった」とばかりに軽く思っていたのだが新八はいつまでたっても、こちらの世界に戻ってくることは無い。ちらり、と時計へと目をやれば新八がその状態になってからゆうに三時間は越えていた。
「(…こんのダメガネ、いつまでこの私を放っておくつもりアルか)」
いらいらとした感情が溜まってきた神楽は新八の背中を思い切り蹴ってやった。
いつもならここで「痛っ!何するの神楽ちゃん!!」なんて言いながら振り返る新八だったが今日は違った。
蹴られた背中を擦るとまた音楽の世界へと戻っていってしまうのだ。
いらいらいらいらいらいら……。
「なんで新八ごときに神楽様が翻弄されなきゃならないアルか。ムカっ腹立ってきたネ!」
神楽はそう言うとずんずんと大股開きで万事屋を出て行った。
****
神楽が出て行ってから数十分後。
やっと新八は耳からイヤホンを外した。
「あ〜やっぱりお通ちゃんはいいなぁ〜……あれ、神楽ちゃんがいない」
満足そうに微笑みながら新八が万事屋を見渡すがそこに神楽の姿は無い。定春の散歩にでも行ったのかと一瞬思ったが、当の定春は部屋の隅でうずくまりながら気持ち良さそうに寝息を立てている。
「あれ?…じゃあどこ行っちゃったんだろ」
とりあえず部屋の掃除でもするか、と立ち上がった新八は異様に自分のいた場所にゴミがあることに気付いた。
それも全部酢昆布の空箱………。
そこで新八はハッと気付き万事屋を後にする。
****
所変わって公園。
ブランコを小さく揺らしながら唇を小さく尖らせて神楽はそこにいた。
「なんだよ新八のオタクダメガネが…アイツの頭にはアイドルのことしか頭にねぇのかヨ。本当もう死んじゃえばいいアル」
「神楽ちゃんっ!!!」
「!」
ぶつぶつと文句を言っていれば突如聞こえてきた聞き覚えのある声。
神楽は驚きながらその声の持ち主を見た。
「し、新八…」
「ハァッ、ごめん神楽ちゃん…」
「…何がアルか。お前はアイドルのことしか頭にねぇんだからアイドルのことだけ考えとけばいいだろ」
「ごめん…僕が音楽聴いてる間寂しかったよね?本当にごめんね」
「…寂しくなんかないアル!
別に新八が何しようが新八の勝手ネ。私には関係ないアル」
「……うん、それはそうなんだけど。
僕は神楽ちゃんと一緒にいたいって思うんだ。だけどそれは僕一人じゃできないからさ…」
「…神楽様と遊んで欲しかったら酢昆布上納するヨロシ」
ぼそりと吐かれた神楽の一言に新八はくすりと笑みをもらし、持っていた袋を神楽に渡した。
「はは、そうくると思った。はい…これ」
「……酢昆布アル」
「それで許してくれる?神楽ちゃん」
「…しょうがないから許してやるアル」
にっこりと笑顔な神楽に新八もにっこりと笑みを返した。
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お通ちゃんにヤキモチやく神楽ちゃんは書きたかったんですがびみょーな仕上がりに…汗
新八は神楽ちゃんのヤキモチ焼きなところも優しく包んでくれるといいです!
090430