CP小説C

□生意気
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鵺郷幼少時代。



「ぬ〜べっ!」

「ぬ〜べじゃない、ぬ〜べ〜だって言ってるだろ!」

「ぬべ〜?」

「……もういい」


狐に憑かれていた少女を助ければその子は毎日遊びに来るようになった。
にこにこ、とした輝かしい笑顔に俺は追い払うことも出来ず、結局相手をしてしまうことになるのだ。


「ハァ、」

「ぬ〜べ、なにしてるの?」

「ん?大学の課題さ。そろそろ夏休みも終わるしやらないとな」

「なつ休みおわっちゃったらぬ〜べ帰っちゃうの!?」


しまった、と口を押さえても出てしまった言葉は戻ってこない。ちら、と少女の顔を見れば悲しそうに瞳が揺れていた…。



「あ〜…まあ、な」

「いやっ!ずっとここにいてよ!」

「……ごめんな?」

「ぬ〜べのバカっ!!」



頭を撫でようと手を伸ばせばそれは払いのけられ、少女は走って出ていった。

残ったのはもやもやとした罪悪感。まだ幼い少女だ。別れを告げるのは早すぎた気がする。


ハァ、と溜め息をつき目の前にある課題へ目を向ける。こんな気持ちのままじゃ到底出来っこないが時間は待ってはくれない。再度大きな溜め息をつくと鉛筆を手に取った。



それから夏休みが終わるまで少女が来ることはなかった。そしてとうとう俺が戻る日がきた。
お世話になった人達に挨拶をし、電車に乗り込もうとすれば遠くから「ぬ〜べ〜っ!!」と声が聞こえてきた。



「・・・っあ!」

「ぬ〜べ〜、今までありがと!ぜったいぬ〜べ〜ならすてきなせんせーになれるよ!」

「ありがとう!絶対先生になるからな!」


ぶんぶんと大きく手を振る少女に俺も大きく手を振り返した。




****

「……なんて事もあったな〜」

「ん?何笑ってんのよぬ〜べ〜!」

「そういえば『ぬ〜べ〜』って言えたんだな」

「ちょっとぬ〜べ〜っ!聞いてんのっ!?」


昔の事を思いだしていればあれから教師になった俺と俺が担任をしている生徒、郷子がむっ、とした表情で俺を見ていた。



「郷子もでかくなったよなぁ〜」

「さっきからどうしたのよ、変なぬ〜べ〜!」



言いながら郷子は職員室から出ていった。
その後ろ姿はあの日の幼い姿と小さく重なった…。





090706


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