11/30の日記
21:51
恋に変わる瞬間
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俺が姫を好きになるのに時間はかからなかった。
姫はいつも俺の傍に居てくれた。
稽古の時間は一緒に練習をする。食事の時間は一緒に食う。
散歩の時間は一緒に歩く。
寝る前には二人で必ず星を見る。
風呂の時だけは別だが。
戦場へ向かう時の姫は、凛々しい顔で剣を振るう。
俺も、姫を守るため、国を守るため、必死に毎日戦った。
そうしている内に、姫と顔を遇わせる度に、俺の中の何かがおかしくなっているコトに気が付いた。
それから俺は、頭の中が姫で一杯になっていた。
姫を避け続けたが、逢わなくなる方が苦しくて、姫に心配された。
俺は姫に
「どうして俺の心に踏み込んでくるんですか……」
と、言ってしまった。
とても失礼なコトを言ってしまったと後で後悔した。
姫は、
「……あたしは…騎士のコトが好きだから…放っておけないの。」
と、言った。
俺は自らの地位も、恥じらいも何もかも捨てて、姫を強く抱き締めた。
姫は、俺を受け入れた。
姫のさらさらの髪の毛が、妙にくすぐったかった。
姫を抱き締めていた時間は、長くも感じられたし、一瞬のような感じもした。
俺は恥ずかしさと姫への無礼さから身体を離して距離をおいた。
姫はにこにこしたまま、
「たまにはそんな騎士もいいね」
と、言っていた気がする。
「俺は…姫、貴方の為に戦います。死んでも…貴方が生きていれば……それでいい。」
「あたしがもし死んでも……騎士はこの国の為に戦いなさい。あたしが愛するこの国を…死んでも守りなさい。それが貴方の使命なんだから。」
「姫の命令であれば…この命、その為に使います。」
「ありがとう……騎士。」
俺が姫と交わした約束が守られたのかは知らない。
でも…姫の国は俺の心の中で生き続けている。
永遠に…
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