Novel 1

□邪推
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「手塚!!」
今日も大石は手塚に構いっきりだ。
手塚の肘の怪我が暴露されてからというもの、大石は手塚への過剰な心配を隠そうともせず、
手塚の傍を離れることなく付きっ切りの状態が続いている。


部室にいても、部活中も、それ以外でもクラスが隣同士なのでしょっちゅう
行き来しているらしい。


意外なのは『仏頂面の鉄仮面』と名高い部長殿が、それを受け入れていることだ。


大石の過剰な心配を、嫌がることなく、疎ましいとも言わず、されるがままなのだ。



「なんでかなぁ・・」
「さあね」
サーブの練習を終えて、軽く屈伸し、2、3回ジャンプして身体の力を抜くと
走るためにコートを出る。
付き合うよ、と不二が声を掛けてくれる。


グラウンドの隅で手塚と大石、乾がスコアボードを手に難しい顔をして
何か話し合っている。
遠目で見ても、大石は手塚しか見ていない。
大石の『絶対』。
絶対・・ねぇ。

他に並ぶもののない、他との比較対立を絶している、
完全で自らに独立に存在する。

要するに大石にとっての一番、なのか。



「大石欠乏症だ・・」
「また始まった。それって昨日も言ってなかった?」
ゆっくりとしたペースで走りながら不二と話をする。
「ここんトコまともに顔見てない。・・・話も出来ないし」
手塚に構いっぱなしで、俺のことはほったらかし。
嫉妬心、というよりはわけの解らない苛立ちと不快感。
「まぁ確かに、大石は手塚の怪我に関してはオーバーセンシティブだよね」
「神経過敏?」
「そう。手塚本人は怪我はただの怪我で、治せるものだときっちり
考えてるのに」
「大石だけがパニクってる」
「他に何かあるのかな?あの二人」

言いながら不二はうっそりと笑ってコート内の二人を振り返った。
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