Novel 2

□約信
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「寝坊するなんて、どうしたのさ?」
遅刻ぎりぎりで教室に駆け込んだオレを、悪友は可笑しそうに突いてくる。

目覚まし時計を自室に置き忘れた、おまけにあんな夢見るなんて・・。

「朝っぱらから・・」
もう大変だった、傍らで眠ってる秀一郎はなかなか起きないし。
何とか叩き起こすと、朝ごはんどーにかしろよっ!と言い捨てて何も食べずに
部屋を飛び出してきたのだ。
昨夜から来客がいたことも、すっかり忘れていた。

「お腹減った・・」
かばん抱えて必死で走ってきて、何とか遅刻は免れたけれど。
机に突っ伏すと同時に、小さなビニール袋が置かれた。
小さなどよめきと、一気にざわつきだした教室に顔を上げると・・。

「・・おチビ?」
何でココにいるんだよ?しかもウチの制服着てるし・・どういうことだろ?
オレ、まだ寝ぼけてるのかな?

「コレ、アンタに渡せって」
大石サンから預かってきたと差し出された袋を覗き込む。
紙パックの牛乳と野菜ジュースとサンドイッチと菓子パン。
「サンキュ」
サンキュ、秀一郎!早速がさごそと食べ始めて、はたっと気が付く。

「・・・編入?」
「違うね、2週間だけ日本の高校生活体験してみようかなって」
手塚さんもいるし、テニスも出来る環境にあるし・・・。
へぇ、有名な現役テニスプレーヤーが高校の部活に現われるなんて、
テニス部はそれはそれは盛り上がるだろうな。
「人ごとみたいに言わないの、英二もテニス部員なんだから」
不二の呆れたような声に、おチビが少し笑った気がする。
「ふぅん・・・」
じゃぁ放課後が楽しみだと言い捨てて、去っていった。


あれ・・2週間?・・て、もしかして2週間ウチに泊まるのか?!
・・・この先、2週間も秀一郎と同じベッドで眠るんだ。

微かに触れた指先の温もり、頬に感じた健やかな寝息。
無意識なんだろう、腕を伸ばしてオレを抱きしめようとするクセも。

「英二?」
「不二・・・どうしよ」
「何?パン詰まらせたの?」
違う、やばい・・もっと深刻かも・・・。
寝不足になりそうだと、思わず頭を抱えた。
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