Novel 1

□抱擁  菊丸視点
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降り続く雨の音に不意に目が覚める。
時間を確認しようと枕元にある時計を掴もうとして・・。
身に着けているパジャマの袖をしっかりと握り締めている大石に阻まれる。


・・・あぁ、そうか。


何となく窮屈さを感じるのは、躰のあちこちに大石の
腕や脚が絡まって身動きできないせい。

間近にある大石の半開きの唇から漏れる気持ち良さそうな寝息が頬に触れ、
くすぐったいような甘ったるい気分になる。


俺は抱き枕かよ・・。


そう思っても、悪い気はしない。
『他人に甘える』ことが苦手で、罪悪感まで覚えるような大石がこんな風に自分にだけ見せる、
甘えるような仕草や行為は逆に嬉しかったりする。


それと、熟睡してる(と大石は思ってる)俺に囁く声。



『英二・・。え・・じ・・・・大好き』
日頃聞くことができない言葉を聴きたくて、無理やり眠っているフリをしている。
何度も囁かれる愛しい声、耳元や唇やまぶたに触れる吐息と柔らかな唇。

・・ホントは起きてるんだけど。
バレたら大石、怒るだろうな・・・。
まったく。
聞いているこっちがハズかしくなるような声で、心地良いトーンで囁くなよ。



少し右手を動かすと袖を掴んでいた大石の指がするりと落ちた。
ようやく自由になった手で、間近にある頬をそっと撫でる。
眠り続ける大石の頬を繰り返し撫で、ぷっくりとした柔らかな唇も存分に指先でなぞる。
・・幾らでもキスをしたくなる。


そのまま首筋に手を下ろすと、無数の鮮やかな朱色が目に映った。
先程噛み付いたり、吸い付いたりして、大石に残した独占の痕。

・・・やりすぎたかな。


最初の頃は『この行為は好きじゃない』と言い切っていた大石を無理矢理組み敷いて。
何度も躰を開かせて。


そうして、もう一人の大石を引き摺りだした。
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