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□SS 10
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『甘い痛み』



その指先が身体の奥に触れる、未だに慣れない感触に無意識に頬が強張る。
真剣な眼差しで英二はオレを見つめて、身体を抉じ開けようとする。
その首にかりつきながら、息を詰めてきつく目を閉じているとふっ・・と
指が抜かれた。
英二が息を吐いて、とんとんと撫でるように背中を優しく叩いてくれる。

「・・止めるのか?」
「だって大石・・痛がってる」
その言葉に小さく笑うと、ちょっとむくれたような英二の頬を両手で包み込んで
キスをする。
「たぶん痛いんだと思う・・けど」
この痛みがどんなに甘いか、英二には解らないんだろうか?
大切な相手と、身体を繋げることが出来る喜びと少しの不安。
本当は恋焦がれていたと、そう言って抱きしめることはとても幸せで。

「・・・けど?何だよ?」
「上手く言えないんだ」
「嘘つけ」
肩を噛まれる、胸のあたりを這う舌が腹をつたい太腿の内側までゆっくりと
舐めるさまを目で追う。
「っ・・」
微かに喘ぐと、英二がくすっと笑った。
感じるところに的確に舌先が這いまわる、感じることを気持ち良いと覚えた身体。
咥えられて、絡みつくように舐められて、濡れた音が耳に届く。

「・・・あっ・・ん・・」
身体が震える、強烈な快感。
このままそれに身を委ねてしまえば、すぐに絶頂が来るのは解かっていた。
息が上がって、身体を動かすことも出来なくて。
彷徨うように伸ばした手を、英二がしっかりと握りしめてくれる。
絡み合う指先、蕩けそうな熱さと、気持ち良さで朦朧とする意識。

・・・痛いくらいの快感の狭間で、目を閉じて想う。
甘い痛み。それは時間をかけて愛し合いたい。
少しずつ英二の指に慣れて、肌に馴染んで、いつか痛みが快感に変わる瞬間まで。

そのときまで、英二は待ってくれるだろうか?・・傍にいてくれるだろうか?

・・・アイシテル。

誰よりも、自分自身よりも。

何か言葉を漏らせば、そのまま涙が溢れそうで・・ぎゅっと唇を噛みしめて
目を閉じた。


<了>

英二くんに応えようと何だか必死な大石くんです。
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