短編小説の世界

□Doll's Party〔番外編〕
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「猫耳の呪いは恐ろしや
それはある晴れた日の
事でした。

ここはどこにでも有りそうな住宅地の内の一つ。
見る限り普通の家だ。
ただ、中に住んでいる
人達が普通じゃないだけで。

「あぁ紅姫それ私の苺食卓の席に着いた黒髪の
女の子が大声をだす。
ゴスロリ風の服と長い黒髪が特徴的な小学生くらいの 女の子だ。
「そう堅い事を申すな、
百合の字。我は紅くて甘いものが大好きなのじゃ。
苺の一つや二つでごちゃごちゃ言うでない。」

紅姫と呼ばれた女の子が
悪びれなく言う。
こっちは紅い髪に紅眼、
服装は十二単という
平安貴族の様な小学生くらいの女の子である。
「騒がしいな…百合阿、
苺の一つや二つでそう怒るな。紅姫も盗った事は
ちゃんと謝りなよ。」

突然、二人の会話に
第三者が入ってきた。
茶髪をポニーテールに
している緑眼の女の子だ。服装は体に包帯を巻いて
いるだけという不思議な
格好をしている。
「あっまーい大甘だよポポロちゃん
私はねぇ、ショートケーキの苺は最後まで残しておく派なの一番の楽しみなの
それだけは譲れないの

身振り手振りで
ショートケーキの苺に
ついて熱く語る百合阿。
ポポロと呼ばれた女の子はそれを何故か真剣に
聞いている。
…彼女達は実は人間
ではない。
StoneDoll'sと呼ばれる
生命を持った人形だ。
だが、その姿はほとんど
人間と変わらない。
肘や膝の関節を見て
辛うじて彼女達が人形だと判るくらいだ。
「百合姉〜、そんなに
苺食べたいなら私の
あげるよ〜」

突然声が聞こえたので
熱演を一旦止めて声の主を全員見る。
それは妖精だった。
大きさは掌くらい、
金髪を耳の上で二つに結びキラキラ光る4枚の羽を持っている可愛い妖精だ。
「ゆえ…あなたって娘は…
ゆ〜え〜

ゆえを握りしめて
頬擦りをする百合阿。
「きゅう〜
ゆ…百合姉…苦し…

顔を真っ赤にして
百合阿から逃れようと
手をバタつかせるゆえ。
「…百合阿、もうそろそろ放してやらないと
ゆえが潰れてしまうぞ。」

ポポロがさりげなく
ゆえを助ける。
「え?はわぁっ
ご…ごごごごめんゆえ
だだだだだ大丈夫

ポポロに言われて
初めて気付いたのか、
慌ててゆえを放して謝る。「び…びっくりしたよぉ…」
本当にビックリしたのだろう目が潤んでいる。
「相変わらず手加減が
苦手な様じゃのう…」

「むぅそんな事ないよ今のは…」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ
突然二階の方から
物凄い大声がきこえた。
「な…何だ
「しーちゃん…?
どうしたのー

とりあえず全員で
二階に上がる。
「どうしたのじゃ
白の字

「何事だ白夜
「白兄
部屋の中には
一人の少年が座っていた。左腕は巨大で十字架が
刻まれている。
顔は百合阿とそっくりだ。目の色が灰色だが。
流れる様な黒髪も
百合阿とそっくりである。…ただ、その頭には…
「…な…?」
「…猫…耳…?」
「…猫耳…だねぇ…」
猫耳が生えていた。
「……………………」
「………しーちゃん………
………可愛いー

場の空気などお構いなしに白夜に抱きつく百合阿。
「ぐはぁっ
ち…ちょっ…苦し…

突然の出来事に対応できずなすがままに抱き締められる白夜。
「ゆ、百合姉
ちょっと落ち着いて
白兄が死んじゃう

ゆえが止めようとするも
小さくて非力なので
止められない。
「ゆの字では無理じゃ
ここは…ポの字

「わ…わかった
落ち着け百合阿ー

白夜に頬擦りしている
百合阿の脳天に見事な
空手チョップが決まる。
「うきゃあ
頭を押さえて踞る百合阿。「…す…すまん…助かった…」
苦しそうに息をしながら
お礼を言う。
「だ…大丈夫?白兄…」
ゆえはいつの間にか白夜の頭の上に乗っている。
「…あぁ、なんとかな…
…だが、とりあえず
心配しながら耳を触るのはやめろ。ゆえ。」

どさくさに紛れて耳を触る好奇心旺盛妖精。
「…話がずれたな。話を戻そう…」
「…ポの字に賛成じゃ」
「…賛成に賛成」
「…そうしてくれ。
話が進まん。」

「…てへ
てへじゃねぇよと
その時全員が思った。
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