幻想入り〜贋作する程度の能力〜

□第一章〜贋作された世界〜
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「はい到着♪」
紫の声が聞こえたので
恐る恐る目を
開けてみる。

「………………………」
周りを見回してみる。

…何やら光が
沢山舞っている
階段の上に私達はいた。

「はいは〜い♪
ここが幻想郷の
名所の一つ、
冥界『白玉楼』
で〜す♪」
振り向くと紫が
笑顔で階段の上を
指差していた。

「…いや、あの…
…今冥界って
聞こえたのですが…」
だらだらと冷汗が
流れる。

「そうよ?それが?」
きょとんとした表情で
首を傾げる。

「…じ、じゃあ私達は
死んじゃったん
ですかー
あわあわと慌てる。

「…いや死んでない
死んでない。」
隣の魔理沙が否定する。

「…紫は境界を
操れるからね…
幻想郷では現世と
冥界の境界が薄いのよ。
…それも紫の
仕業だけどね…」
やれやれという感じに
首を竦める霊夢。

「まぁまぁ、
そんな事より
早く入りましょ♪」
にっこり笑って
急かす様に
後ろから押す。

「わ、そんなに
急かさなくても
行きますよ〜」
押されて慌てながらも
階段を登る。

「ついた〜♪」
ぴょんと楽しそうに
門の前に立つ紫。

「…では入って
みますか。」
そんな様子を見て
思わず苦笑しながら
門を開ける。

「あ、一つ気を付けて…」

「はい?」
霊夢の声に振り返る。

「…貴様…何奴

「…
咄嗟にしゃがむ。

すると、ついさっきまで
頭があった位置を
銀色の刄が通っていた。

「…ふん、今のを
躱すとは…やるな。」
声がした前を見ると、
銀髪をボブにした
小柄な少女が
刀を構えて立っていた。

「…はぁ…どうも。」
突然の事に驚きながらも
立ち上がる。

「…だが、見知らぬ者を
通す訳にはいかん。」
再び刀を構える。

「…いや、あの…
…一応幽々子さんの
知り合いなんですが…」
頬を掻きながら
一応弁明してみる。

「ふん、戯れ言を…」
…駄目でした。

「…あの…彼女は…?」
こそこそと霊夢に
話し掛ける。

「…彼女は魂魄妖夢、
白玉楼の門番兼庭師よ」
同じくこそこそと
返してくる。

「何をこそこそと
妖夢が再び地を駆ける。

「…っ…
身構え、妖夢の
動きを見る。

銀の刄が振るわれる…
…その直前、

「ちょっと待った〜
なんか少し気の抜けた
声に止められた。







「…へ?」
妖夢が急ブレーキで
止まりながら
間の抜けた声を出す。

「こらぁ〜妖夢〜、
お客さんが来たら
いきなり追い返しちゃ
駄目でしょ〜
ふわふわ浮かんだまま、
ゆっくりと白玉楼の主…
…西行寺幽々子が
現れる。

「…ゆ、幽々子様
妖夢があわあわと
慌てている。

「…幽々子さん…」
安堵して力を抜く。

「あら、貴女が
出てくるなんて
珍しいわね。」

「本当だぜ。
いつもだったら
妖夢と戦わせて
それを見てるのに〜。」
霊夢と魔理沙が
呆れた様に
会話に加わる。

「彼も妖夢も大好き
だからね〜
傷付くのとか
見たくないし〜。」
にへら〜と笑いながら
妖夢と白夜の
頭を撫でる。

「……ぁぅ……///」
「………………///」
妖夢と共に撫でられて
気恥ずかしくて
真っ赤になる。

「ま、遊びに来たのなら
ゆっくりしてってね
…何か微妙な笑いで
家に誘われた。







「…お腹すいた〜
…何か幽々子さんが
駄々っ子の様に
手足をばたばたして
暴れている。

「…駄目です、つい先程
食べたばかりでしょう。」
そんな幽々子を
嗜める妖夢。

「…あの…
…食べ物位なら
私が作りましょうか?」
あまりにばたばた
暴れているので
見兼ねて声をかける。

「ほんと
暴れるのをやめて
がばっと起き上がり
目を輝かせる。

「…お兄さん、
ちょっとこちらに…」
溜息をつきながら
ちょいちょいと
手招きをする。

「…?何ですか?」
近付いてみる。

「…すみません、
今白玉楼はちょっと
財政難で…
…食材があんまり
無いんです。」
げんなりとした表情で
ぼそぼそと言う。

「…え?そうなんですか?」
ちらりと後ろを見る。

「………………………」
白夜が言った言葉を
信じて目を輝かせたまま
幽々子がこちらを
見つめている。

…この笑顔を
裏切りたくはない。

「…分かりました。
なら、白玉楼にある
食材は使わず、
さらに増やして
おきます。」

「…え?」
驚く妖夢と目を
輝かせている幽々子に
にっこりと笑いかけ
キッチンに入っていく。

「…どういう事
でしょう…?」
妖夢がぼそりと呟いた。







数十分後、

「…あら…」

「…え……?」

「…うわ〜…」

「…お〜

「…すっご〜い

紫が楽しそうに笑い、
妖夢と霊夢が驚き、
魔理沙と幽々子が
目を輝かせる。

それもそうだ。
キッチンから出てきた
白夜が机に並べたモノは…
…大量の料理だった。

「速攻で作ったので
凝ったモノは
ありませんが…
…お口に合ったなら
幸いです。」
額に少し付いた汗を
拭いながら
にっこりと笑う。

「美味しい〜
…人の話を
聞いていたのか
いないのか、
何時の間にやら
出した食事の1/3は
幽々子の腹に
収まっていた。

「うわっ幽々子様
食べるの早っ

「皆急いで取らないと
無くなるわよ

「幽々子様少しは
遠慮して下さいよ〜

他の三人が少し遅れて
食べ始める。

…因みに紫さんは
何時の間にやら
自分の分は取り、
少し離れて他の三人を
笑って眺めていた。







「…そろそろ帰りますね」
にっこりと笑い
手を振る。

「また来てね〜

「色々ありがとう
ございました
幽々子が手を振り、
妖夢がぺこりと
頭を下げる。

「…はい、では。」

…四人の姿が
スキマに消える。

「…行っちゃい
ましたね。」
少し淋しそうに
苦笑する。


「…彼、本当に
何者かしら…?」
…ぼそりと幽々子が
つぶやく。

「…?…幽々子…?」

「…ううん、何でもない」
妖夢に笑いかけて
中に戻る。

「…光と影は
表裏一体…か…」
…その呟きは、
誰の耳に届くこともなく
空に消えていった。







「…と、言う訳で
ここが人間の里よ」
霊夢が少し手を
広げながら言う。

「…うわぁ…」
驚きで目を輝かせながら
周りを見回す。

「買い物とかは大半
ここで済ませられるわ。
物珍し気に周りを
見回している白夜を見て
苦笑する。

「寺子屋も一応
あるんだぜ。」
にひひと笑いながら
言う魔利沙。

…と、

「…悪かったな、
一応で。」
声が聞こえたと同時に
魔利沙の頭に
本が数冊乗る。

「…げ…けーね…」
魔利沙が気怠そうに
後ろを振り返る。

後ろには銀髪の
綺麗な女性がいた。

「…ん?君は…」
女性がこちらを見る。
…因みに私は
霊夢の後ろに
隠れている。
(身長差があるので
隠れていないが)

「…あぁ、君が
噂の白夜君?」
じーっとこちらを
見ながら
思い出した様に言う。

「…は、はい。
博麗神社でお世話に
なっています
白夜っていいます。
はじめまして。」
取り敢えずぺこりと
頭を下げて挨拶する。

「…ふむ、礼儀正しいな。
気に入った。
私は上白沢慧音、
ここの寺子屋で
先生をしている。」
微笑みながら頭を
撫でてくる。

「……………………///」
…気恥ずかしい。
というか何故皆
私の頭を撫でるの
だろう。

「あら、そういえば慧音。
寺子屋はどうしたの?」
そんな私の様子を
見ながら聞く。

「あぁ、今日は
休みなんだ。
…で、久々に
妹紅とゆっくり
しようと思ってな。」
手に持ったバスケットを
指して笑う。

「へ〜…妹紅か〜、
そういや最近
会ってないな。」
魔理沙が笑いながら
言う。

「お、じゃあ
一緒に行くか?」
笑顔で誘う。

「え?良いんですか?」
対照的に遠慮がちに
言う。

「あぁ、構わないさ。
寧ろ妹紅も噂の君に
会ってみたいと
言っていたしな。」
…何やら知らないうちに
有名になったものだ。

「…そ、それじゃあ
遠慮なく…」
思わず苦笑した。
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