妄想物

□断ちきれぬ糸
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*side Squalo*

『役にたつ』『ボスにしてやる』学生時代からの様々な誓いを込められた長い髪。誓いとともに封じていた想いともども、清算するべき時がきたのだろうか……。



ようやく体が動かせる程度まで回復したスクアーロは今、鏡の前に立ち、己の姿を睨むようにみつめていた。体が揺れるたびにあわせて揺れる髪が遠い記憶を呼び起こし、知ってか否かスクアーロは自嘲の笑みを浮かべた。

怒りに魅せられたあの瞬間。知らぬ間に落ちていた恋。ただ己が仕える唯一の主だと慕っただけではなかったのだと気付いたのは、側に在るようになってから数年たった後だった。
理不尽な暴力を受け、はむかいながらもなお側に在り続けたのは、ただの忠誠心からだけではなかったのだ。

同性であることはもとより、想い人の性格ゆえに隠し通すことを決めてからは、誓いの髪に重ねて願をかけた。

『表せないかわりに、この髪に想いがこもるように…この恋心が、やつの野望を助けられるように……』

それを誓ったころとは比べられないほどに長くのびた銀糸。スクアーロはそれを己の手にとり、歪んだ笑みで呟いた。

「潮時…ってことかぁ」

8年前のあの時から、心のどこかでわかっていたことだった。もしかしたらと思いながらもまさかと思い否定していた。XANXUSが9代目の実子でないと知ってもなお、やつが10代目を継ぐのだと信じていた。それがやつの、XANXUSの野望だったから。己の忠義と、恋をも懸けたものだったから。己が頂くボスにふさわしいと思ったから。信じることで己の秘めた恋が許されるような気がしたから。報われるような気がしたから。
信じた。信じたかった。

『XANXUSが負けるわけがない』

それは、生温いとしか思えない少年に崩されてしまったけれど……。

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