過去拍手お礼SS!

□one day.
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いつもと変わらない1日
なのにそれは、何の前触れもなく突然やって来た



=one day.=



空から降り注ぐ太陽が、いつなく眩しい。
額にうっすらと浮かんだ汗を拭い歩き出した。

「あれ・・・」

さっきまで100m先くらいにいた彼女を見失った。
暑さのせいからか、最近護衛にも仕事にも気合いが入らなくなっていた。仕事の依頼も立て続けに入っていて、睡眠もろくにとっていない状態。このところすこし体調がよくなかった。

「(こんなことで体調を崩すようじゃまだまだだな・・・)」

すこしズキズキする頭を抑え、辺りを見回し彼女を探す。

「せっ・・・ちゃん?」
「あ・・・・・・」

後方から聞こえたのはいままさに探していた彼女のひかえめな声。

「あ、せっちゃんもいま帰り?せやったら一緒に帰・・・」
「すみません、急いでいるので。失礼します」

礼をして背中を向けた。
いつ後ろに行ったんだ・・・。
そんなことにも気づかないなんて、本当にどうしたんだ私は。
と心の中にもやもやが生まれる。

「待って!」

がしっと腕を捕まれた。
いつもならそんなことしない彼女なのに。入学してすぐはよく引き留められて

“どうして・・・どうして・・・?”

そう何度も問いかけられた。そのたびに自分の気持ちをおさえてその腕を振り払った。
今はどうだろうか。
突然呼び止められたことに驚く自分。それだけならまだしも、彼女と話したい、そう思う自分がいた。
彼女に引き留められたい
そう心のどこかで願っていた。
その気持ちに答えるように木乃香が口を開いた。

「体調悪いんやろ?」
「え・・・・・・」

何をしてるんだ自分は
早く腕を振り払うんだ
私なんかが話してはいけない
いつもやってることじゃないか
いつものように
自分の気持ちを抑えて

頭ではわかっているのに。
体が動かない。

「せっちゃん最近授業中とかダルそうにしとるから・・・。体調悪いんなら、無理しない方がええよ」

嬉しかった。木乃香が自分を見ていてくれてる。あんなに冷たく引き離して、最近はあんまり話しかけて来なかったから、あきらめたのかと思っていた。

「ありがとう、ございます・・・」

木乃香は驚きをかくせなかった。また素っ気なく返事を返されて、どこかに行ってしまうと思っていたから。刹那の表情は下をむいていて分からなかったけどすんごく嬉しかった。

「せっちゃん・・・うち・・・」
「お嬢様、無礼な行動お許しください・・・っ」

刹那は自分の気持ちを抑えきれなくなって木乃香を優しく抱き締めた。


懐かしい匂いがした。
とっても落ち着いて、心の中のもやもやがすぅーっと消えてく。
今日だけ、今日だけ・・・
何度も、言い聞かせて。

明日からはまた、いつも通りに。
だからせめて今日だけ・・・

木乃香は静かに刹那の背中に腕を回した。



END.
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